狐兎百合BL小説
れー。
そんなわけで、今日もサシでオンライン飲み会をしている。
「じゃあ、これは? ねっち、好きでしょ」
「いや好きですけども。なんで分かるの」
「わからいでか」
モニター越しに映るウサ耳カチューシャがピョコピョコ揺れている。それを眺めながら手元のストゼロロング缶を一口すする。
姫はかわいい。
趣味も合うし、話してて飽きない。
まさかオフでもウサ耳カチューシャを愛用してるとは思わなかったけど、今ではちょっとチャームポイントだな、コイツのおもろいとこを理解できるのは僕だけかもしれないし、て思っちゃってる。
女の子相手だと、つい良いところを見せようとして空回りしちゃうことの多い僕が、すごく自然にいられて。なんていうか、楽だ。
でも。
でも、ひとつだけ問題がある。
姫(ところで僕の命名ではない。自称である)、男なんだよなあ〜〜〜
でもかわいいんだよ。自分でもなんでそう思うのかわからない。
そもそも学生時代からインドア派、就職後もリモートワークで痩せぎすの僕に対して、むこうの方がタッパもあるし、元運動部の名残か体格もしっかりしている。
今まで片思いしてきた女の子達と、全くもって重ならないのだ。
いや〜、某SNSの相互達にも事あるごとに、「初恋の影を追い続けるのはヤメロ」とからかわれてはいるけども……
そこまで完膚なきまでに別ジャンルなんてことある?!(ジャンルとか言うな)
単に歳の近い男同士、気の置けない友人じゃあないのかとか、それはせいぜい憧れとか尊敬とかそういう感情じゃないのか、と自分でも思うけど。
それで「かわいい」て感情は湧いてこないよな……
そもそも仮に、仮にだよ? この気持ちが恋愛感情だったとして、あくまで仮定だけども、もし僕が告白したとして、姫はどうなんだっていう。
……。
…………。
何事も経験じゃん?てノリノリで言いそうだな……。なんなら経験済の可能性は…… いやいやいやいやいやいやいやいやいや
「ちょっとねっち、聞いてます?」
「え、ごめん、なんだっけ」
「やっぱり聞いてなかった。ストゼロはまわりが早いから別のにしたら?まあいいや。もうすぐバレンタインじゃん」
頭の中を見透かされたかとドキッとする。
「なんすか、またボッチいじりすか」
慌てて取り繕うように返したが不自然じゃなかっただろうか。ストゼロのせいで思考が追いつかない。
「いやあ、せっかくだから久しぶりにオフで遊ぼうよって。バレンタインに因んでチョコを持ち寄ってさ」
「え、まあいいですけど……」
「よっし!じゃあ決まりね。ねっちの顎が外れるくらい美味い高級チョコレート用意してやんよ」
「頬ではなく?」
「イエス。顎。」
よかった、ただの遊ぶ相談かという安堵感と、こっちの気も知らないでというジリジリとした気持ちがないまぜになったまま、口からはいつものように軽口が流れ出る。
でもまあ断るのも不自然だしな、バレンタインに予定がないのは日頃からネタにしてたしな、とぐるぐるしている間にも話は進んでいく。
「デートコースはねっちが考えといてね〜。ノープランだった時用にプランBは用意しとくけど」
「あ?え?うん」
うん?????? あの?????? 姫??????
「言質とったり。おやもうこんな時間。今日はそろそろお開きだね」
「あ、はい。」
「なぜ敬語w 歯磨けよ、風呂は明日にしろよ、風邪引くなよ!じゃあおやすみ〜」
「お、おやすみ」
姫に遅れて退室操作をし、暗転したモニターを前に呟く。
「デート……」
いやいやいやいや、分かってる、分かってますよ。言葉の綾というか、ほら!英語だと恋人同士のそれとは限らない用法のはずだし?!
…………。ふう。
酔った頭に酸素を送り込むように深呼吸をする。ここは腹を決める場面かもしれない。
覚悟が揺らがないうちに、改めてブラウザを立ち上げる。
あ、明日平日か……有給申請もしとこ……
狐兎百合BL小説 れー。 @kokushiku_tomei
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