たこ焼きのような男の子と女の子だった少女

神永 遙麦

たこ焼きのような男の子と女の子だった少女

 昔、たこ焼きのような男の子がいた。

 後頭部が半分坊主で、生えているところは茶髪。流石にあおさはないけど、そばかすが散っている。

 私は、そんな男の子を親友だと思っていたけど、男の子は6歳くらいでもう成長しなくなってしまった。障害じゃないみたいだから、訳がわかんない。


「明日は祐菜ゆうなの18歳のお誕生日だね」と男の子が言った。昔と一切変わらなかった高い声で。

「そうだね……」対して私は、それなりに低い声。小さかった頃のようなキンキン声じゃない。

「嬉しくないの? 18歳って今じゃあもう大人だよ」とキラキラ輝くお目々でこっちを見る。子どもだなぁ。

「別に。この歳になっちゃうと色々見えてきて大人になるのがやんなっちゃうの。ま、一人暮らしには憧れるけど。あ〜、でもお洗濯と料理とかやりたくねぇな〜。お母さんやってくれないかな」

「それ、一人暮らしの意味ないでしょ。と、言うかお料理楽しいじゃん」

「ちびっこのお手伝いと一緒にしないでよ。片付けとか買い出しとか、あと献立決めとかあるの! それが毎日だよ!」

「洗い物すればお小遣いもらえるでしょ。ラッキーじゃん!」

「この永遠のちびっこめ」


 わしゃくしゃと男の子の頭を撫でると、キャッキャと笑われた。兄妹のような関係だったのに、いつの間にか年が離れた姉弟のようになっている。


「大きくなったら恋も出来ちゃうよ! あと18歳なんだから結婚も出来る! 駆け落ちしちゃおうよ!」と、男の子はパンと手を叩いた。

「恋は子どもでも出来るよ。っていうか駆け落ちって」笑いをこらえていたら、手でお腹を抱える羽目になった。「でも、恋っかぁ。ちょっとだけ憧れるなぁ。人って自分には縁がないものに憧れるものなのかなぁ」

 大人ぶって名言っぽいことを言ってみると、男の子はピクッと体を震わせた。一瞬だけ顔が真っ青になったけど元に戻った。


「祐菜ならきっと、素敵な人に巡り会えるよ。だって祐菜の人生はこれから長いんだもん。夜通し腹を割って話せるようなお友達も出来るし、一生一生ずっと一緒にいたい人とも恋に落ちるよ」

「そのお友達枠は女の子だったらいいな〜。女友達は1人もいないし。そもそも君がいなかったら私はぼっちだよ」



 いつか出会えたらいいな〜。今、私の視線の先には一番星。いつか私も……。ん? 一番星?

「星出てんだけど。そろそろ帰んないとヤバくない?」

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