第6話 小学校

 俺も大分大きくなって、魔法も使える様になって、大満足だ。

 リュクスの時に異空間にしまっておいた物たちは無事だった。無駄に広い空間にゴチャゴチャと詰め込まれた物は半分ガラクタじみた物だが、どれもそれなりの効力を発揮する魔道具である。形やデザインがちょっと……と言いたいが、あのときはそんなのどうでも良かったので、致し方なし。と言う結果に落ち着いた。

 魔力の操作はあちらの世界よりも難しく、扱うのにも細心の注意が必要だ。そもそもこの世界には魔法が存在しない為、無闇に外で使えない。だからまだ火を扱う魔法は使った事がない。

 俺がこの世界に来た魔法だが、あれは世界を行き来できる魔法ではない一方通行。そう、一方通行なのだ。だからあの魔法の残穢を辿っても元の世界に辿り着く事は出来ない。ならどうするかって?もちろん研究するに決まっているだろう?この不思議な世界にこられたんだ。向こうに戻れないはずがない。生憎基本となる魔法陣は決まっている。石を何処かに転送する事が成功出来た。そして元の姿に戻る方法だが、俺の体の中にある物質を抜けば元に戻れる。今は戻れたら困るので体の中に入れてある。これなら落とす心配などもないし。

 でも取り出す時はちょっと痛いかもしれない。

 そこは仕方がないと承知の上である。物を持っているよりずっといいと思うし。


「涼、そろそろ行く時間でしょう?着替えた?忘れ物はない?」

「うん大丈夫」


 俺は自分の部屋のある2階から大声で返事をする。家を出る時間は8時。家から学校は近いからあんまり時間はかからないけど、早めに行って校庭を走らなければならないので、仕方がない。

 実際ホームルームが始まるのは8時35分だけど、学校に付いていなくちゃいけない時間は8時15分だ。

 朝マラソンというのを毎日やらなくてはならなくて大変だ。だけど、どうせ俺は体を鍛えないと何にも出来ない体になってしまったから、やらなくちゃいけない事であることに変わりはない。

 他にも筋トレなどをした方がいいのかもしれなけど。必要最低限で問題はないだろう。

 この世界は思っていた以上に安全な世界だった様なので、そこまで力が必要という状況にはならないと思う。


「そろそろ行くよ!」

「今いく」


 8時ちょっと前。通学班の人たちが来てしまう。

 通学班は同じ地区の人達で集まってできている班で、通学の時に班の子供達と通学しなければならない。俺のお隣さんも今年から小学生になったらしく、同学年だ。

 学年は帽子の色を見ればわかる様になっている。通学の際、一年生だけは学年カラーではなく、一年生だとわかるような黄色い帽子をかぶるのだが、ちゃんと学年カラーの帽子もある。

 俺の学年カラーは青だった。だから、帽子の色や、指定ジャージのラインや名前の刺繍の色は青色だ。

 他の学年はピンクとか、黄色とか、赤とか、紫とか、沢山色があるけど、どの学年が何色なのか判断ができない。

 それは、こっちの世界の子供の見た目が大きく見えるせいだと思う。

 貴族の子供は12歳でこんなに大きいことはなかった。身長がいくつ位あるのか具体的に大きさをいうのは難しいけど、大人と大差ない。それに男の子であれば女性の先生の身長を抜かしているということもなくは無い。

 貴族の身長が低いのはなんでだか分からないけど、将来的にはちゃんと大きくなっているので成長に関して大きな違いは見られない。


「行ってきます」

「行ってらっしゃい」


 これも前の世界で聞いた事のない挨拶だけど、慣れれば何ら不思議でもない。

↑見送ってくれる人と、出迎えてくれる人がいなかったせい。

 周りの子達は喋りながら歩いている。先生に怒られなければこちらとしても何も問題ないので、特に何か思ったりはしない。

 先生に怒られるのなんて拷問されるよりずっと良い。だけど、子供達は怒られるのが怖いらしい。そんな事で怖いなんて言っていたら魔物とろくに戦えなさそうだな。なんて関係のないことを考えてしまうが、俺の常識は向こうの世界で作られている。こっちの常識も、大分分かる様になってきたけど、やっぱちょっと違うところに戸惑いも感じなくはないんだよね。


「おはよーございます」

「おはよう」


 そして学校がめんどくさくなる理由その一、「挨拶運動」なるものが存在することだ。別に挨拶すること自体が嫌いなわけではないんだけど。やっぱりこれも常識の違いだよね。「ご機嫌麗しゅう」とか「ご機嫌よう」とか「今日の出会いに祝福を」なんて言っていたのだから慣れなくもあるよね。あとは「皇帝陛下におかれましては……」なんて挨拶をしてた。俺は結構「皇帝陛下におかれましては……」を使ってたかな。結構堅苦しい挨拶ばっかしてた気がする。嫌われてたのも大きいんだけど。

 俺をはじめに雇った皇帝はそれをすごく嫌がってたけど、次の皇帝からは不敬だと言われて、正式な挨拶を毎度交わしていた。そのうち俺は王宮に姿を現さなくなったんだけど、アレンに見つかってしまってからは王宮にまた少し行く様になった。

 このまま教室に向かい、荷物を置いたら走らなくてはならない。少々面倒くさく感じる部分もあるが、体力はあった方がいいということは理解しているつもりである。


「涼、走りに行こーぜ」

「うん、今行く!」


元気に子供らしく。精神は大人であっても体は子供である。

子供の様に振る舞わなければ怪しまれる時もある。


梨紅りく、5集走り終わったら鉄棒の方行かない?」

「あ、いいね。俺、鉄棒得意なんだ」

「へぇ、俺あんまりやったことないかも」

「教えてやるよ」

「おっ、さんきゅ」


 それに言葉遣いも結構意識して直してる。平民同士の会話を意識するようにしているけど、たまに敬語がマジてる時もある。ま、先生相手とかなら敬語でも何にも言われないしね。先生は一応上の立場の人になるっぽいから、敬語で話しても全然何も言われない。でも、一年生で敬語を使っている子は珍しいから目立っちゃうかもねぇ。


 校庭5周。大変ではあるけど、10分もかからずに走り切ることができる距離だ。そんなに距離はないと思う。


「はぁ、はぁ、終わったぁ。じゃ、鉄棒やってみるかぁ」

「うん」

「てかお前、体力あるな。あんなにすごい勢いで走ったのに息乱れてねぇ……」

「うーん?結構運動してるからかなぁ?」


 別にこのくらい普通だと思うんだけど……みんなこのくらいのスピードなら付いて来れてたよ?あれ、それは俺の近くにいた人がおかしかっただけ?え?ってことはみんな俺についてくるの必死だったとか?嫌、そんなことはないよなぁ?流石に……


「鉄棒行こう」

「そうだな」


 鉄棒のある場所の近くに貼られている技の表を見ながらやってみるが、意外と難しい。自分の体だけを使うからまだどうにかなるものの、戦闘とはまた違う体の動かし方で、何というか。ちょっと難しい。



8時33分。


「あ、なるよ。帰ろっか」

「そろそろだな」


 俺たちは急いで教室に戻り、ギリギリホームルームに間に合ったのだった。

 そして4時間真面目に授業を受けて、給食を挟み、1時間授業を受けたら。一年生はそのまま解散になった。

 俺は梨紅と一緒に帰路に着いた。


 なんだかんだ充実した毎日であり、宿題という恐ろしいものに追われるという、初めての体験もする学校というものである。

 魔法に関しても順調に研究は進んでいるので、問題ない。


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頭痛オンパレード……悲しいくらいに頭痛い……

 皆さんは体調に気をつけて。

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二度目の異世界は旧友に会う為に 与那城琥珀 @yonasirokohaku

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