第66話 アフター 5

 季節は冬を迎えた。

 学校がすでに冬休みに突入している12月下旬。

 大晦日。

 この頃になると、僕が開発を進めている「忠犬アプリ」はα版が出来上がっていて、実際に自分のスマホにインストールして改善点の洗い出しを行っているところである。


「……結構エラー吐くなぁ」


 使用者の音声指示に応じる形でその後の動作をAIで自動化させようとしているんだけど、アプリの負荷が高すぎるのか途中でアプリが落ちてしまうという……。もうちょっと軽い作りにしないとダメみたいだ。

 まあα版なんてこんなモンであって、むしろ自動化動作そのものは安定しているんだから誇っていいのかもしれない。


「年の瀬だというのに、今日もパソコンとにらめっこしているのね?」


 そんなこの日の昼下がり、アプリの改善に勤しむ僕のもとに里帆がやってきた。

 若干呆れた顔をしている。

 まぁ大晦日にこんなことをしていれば無理もないか。


「今日と明日くらい休んだらどうなの?」

「もうちょっとイジったらそうするよ」


 今やめるのは区切りとして気持ち悪い。

 キリの良いところまで進めてから終えることにした。


 里帆はそのあいだ、ローテーブルで冬休みの課題をこなし始めていた。

 どうやら一緒に勉強するつもりで来たらしい。

 なので作業を終わらせたあとは一緒に課題をこなしつつ、恋人同士が2人きりとあらばもちろん時折いちゃついたりもする。


 いちゃつくと言えば、最近の僕らは当番制みたいになっている。

 どういうことかと言うと、今日は里帆、明日は里奈ちゃん、みたいに1日ごとに僕の独占権が移行していくようになったのだ。

 1人1人が満足の行くスキンシップを行うための施策で、僕が提案したんじゃなくてみんなの方から出されたモノ。

 キスくらいのスキンシップは独占権のない人とでもやるんだけど、それ以上のことは独占権のある人としか基本やらない(それでもみんなで乱れる日もあって、たとえば先日のクリスマスのときは性の6時間をみんなで堪能したりしている……)。


 ともあれ、今日は里帆に独占権がある日だ。

 1年の締めくくりに大好きな幼なじみといちゃつけるのは良いことだと思う。


「琉斗は私のこと好き?」

「当たり前だろ」

「私も♡」


 催眠アプリがないと気持ちをさらけ出せなかった日々がもはや懐かしい。

 外はすっかり肌寒い季節だけど、僕らの火照りは増す一方だ。


「なあ里帆……そろそろするか?」

「あ、待って。今はキス以上のことはしないわ」

「え、なんで?」

「なんでって、今日は大晦日なのよ? だったらせっかくなのだし、年に一度の年越しえっちをシてみたいと思わない?」


 と、年越しえっち……!


「し、シてみたいな……」

「でしょう? ふふ、だから今は溜めておきなさいな。今夜しっかりと搾り取ってあげるから♡」


 とのことで。

 僕はムラムラがヤバいことになった。

 でも精一杯我慢して課題に集中し直し、じきに夕飯の時間を迎える。


 今日の夕飯は萌果が作ってくれた年越し蕎麦。

 おかずとして牡蠣フライやレバニラ炒め、他にもスタミナ色の濃いモノが結構用意されていた。


「どうせ今夜は里帆ちゃんと滅茶苦茶えっちして過ごすんでしょ? だったらりゅー兄ぃ、1年の締めくくりとして里帆ちゃんを落胆させないようにせいぜいモリモリとチャージしとくようにね?」

「ああ、サンキュー」


 自分の番でもないのに、里帆との戦いに備えさせてくれる萌果は神だ。

 ちなみにだけど、最近の僕は食べる量が増えている。夏場から継続中の身体作りが功を奏してちょっとだけガタイが良くなった結果だ。

 正面で一緒に夕飯中の萌果は特に成長せずぷにろりのままだが、まあ萌果はこれでいいと思う。


「……なんか失礼なこと考えてない?」

「か、考えてないぞ……」


 そんな風に誤魔化しながら、とりあえず無事に夕飯が終了。

 それから風呂に入って身を清め、きたるべきときに備えた。


「――おまたせ♡」


 そして午後9時過ぎ。

 斜向かいの部屋で里奈ちゃんが暗黒微笑を浮かべている中、里帆が窓を通じて僕の部屋にやってきた。

 その姿は――なんとベビードール。

 里帆がその手のセクシーランジェリーを着ているところを初めて見た。

 ヤバい……黒のシースルーでメッチャえっち。

 胸元なんてもはや非武装と変わらない……乳首だけが紐みたいなほっそい生地で隠されているだけで、あとはスケスケのレースで覆われているのみ……ゴクリ。


「どうかしら? おろしたてよ」

「そりゃあもう……似合っててえっちだと思う」

「えっちなだけ?」

「あとはまぁ……可愛いよ」

「ふふ、ありがとう♡」


 ご機嫌な表情で僕の隣に腰を下ろしてくると、里帆はちゅっとキスをしてから僕のシャツに手を伸ばしてそのまま脱がせてきた。


「ホント、良い身体になったわね。ちょっと弛んでた以前の感じも好きだったけれど」


 上半身を脱がされ、続けて下半身も脱がされる。

 里帆とえっちがやりた過ぎて、僕はとっくに臨戦態勢だった。

 それは里帆も同じだったみたいで、何がとは言わないけどダラダラ。


「ふふ……じゃあ始めましょうか♡」

「ひとつ確認だけど……紅白とか見なくていいのか?」

「私は琉斗を見ていられれば充分よ?」


 ……うぐ、シンプルに嬉しい言葉過ぎる。


「さぁて琉斗、今夜は寝かさないから♡」


 そう言って里帆が押し倒してくる。

 嗚呼……こりゃあもう美味しくいただかれてしまうな……。


「せっかく大晦日にヤるのだし、除夜の鐘と同じ数だけぴゅっぴゅしてもらいましょうか♡」

「いや待て待て……それはさすがに無――」

「ヤるのよ♡」

「はい……」

 

 頑張るしかないね(白目)


  ◇


 ……結論から言えば、さすがに108回もぴゅっぴゅするのはやっぱり無理だった。

 けれど、里帆と繋がったまま新年を迎えられた挙げ句初日の出までヤりまくれたのは、充足感がヤバかったことをここに記しておく。

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