第41話 既定路線

 里奈ちゃんとのショッピングはその後平和に続いて、日が暮れ始めたところで帰宅した。


「里奈とどこかに行っていたようね?」


 やがて自分の部屋に帰還すると、すでに部活から帰っていた里帆が窓越しに話しかけてきた。その表情がムッとしているのは間違いなく嫉妬だろう。

 とりあえず誕生日プレゼントの存在が悟られないように荷物を棚の陰に置いてから、僕は部屋着に着替え始める。


「なんだよ、お前も僕と出かけたかったのか?」

「な、なんで私が琉斗とお出かけしたがる必要があるのかしら……これだから童貞は自意識過剰でイヤね……」


 ウラで僕を搾りまくってるヤツが何言ってんだか……まったく、こないだのデートで多少素直になかったかと思いきや、里帆は相変わらずコレだもんな。こんなことを言っておきながら催眠アプリをひとたび稼働させればデレて搾り取ってくるんだから、このツンはハリボテにもほどがある。


 このあと、そんな里帆に催眠アプリを使われてちゅっちゅとキスをされたけれど、のためかそれ以上のことはされずに僕はやがて夕飯の時間を迎えることになる。


「――今日は親子丼にしてみたから」


 リビングに出向くと、里帆と同じくとっくに帰宅済みの萌果が、食卓に黄金に照ったどんぶりを並べていた。ちんまい身体にエプロンを着けて栗毛のショートポニテを揺らす萌果は、里奈ちゃんよりも幼く見えるがれっきとしたJKである。

 ともあれ、旨そうな親子丼だった。

 早速席に着いて食べてみると、付け合わせの豚汁と合わせてやはり旨い。


「今日も美味しいご飯をありがとな、萌果」

「ふん……りゅー兄ぃもこれくらい作れるようにならなきゃダメだよ? どうせ一生独り身なんだし、料理の腕磨いとかなきゃね」


 そんなことを言いつつ、本心では僕を依存させようとしているのが萌果である。

 そういう部分で僕はもちろん警戒中だ。いつ催眠アプリを起動されてもおかしくないわけで、気分は戦場の最前線でレーションを囓る兵士である。いつ攻め込まれるか分からないので、常に身構えておかなければならない。


 けれど、夕飯に関しては一応すんなりと済ませることが出来た。その後はまったりと風呂に浸かり、上がってからはリビングでテレビを見る。

 入れ替わりで萌果が風呂へ。


「……りゅー兄ぃ、今日もお願いね?」


 そしてやがて……本日も育乳の時間がやってきてしまう。

 風呂上がりの萌果が、グレーの色気ないスポブラとショーツ姿でリビングに戻ってきてそう言ったのだ。

 これまではそんな姿を見たって何も思わなかったが、義妹だと分かってからはなんだかこう……悶々としてしまう。

 お猿さんと化さないように気を付けつつ、


「……お前、里帆へのプレゼントは用意出来たか?」

「あ、うん……今日の部活終わりにちゃんと買ってきたし」


 そんなやり取りを行いながら、ソファーで育乳を開始。

 スポブラの上から無の境地で揉み揉み。萌果は家族。妹。変な気分になるわけにはいかないという戒めを自らに強いてのことだ。


「にしても……お前の胸全然育たないな」

「う、うっさいし……」


 揉み続けて早数年だが、目の前のまな板は起伏を持たないままだ。女子は成長が早いって言うし、高1の夏はすでに成長期の末期だろう。つまり現状でコレだとケイスケホンダでも伸び代を見つけるのは難しいと思うんだよな。


「ふん……りゅー兄ぃがショボい刺激しか寄越さないから育たないんじゃん……」


 けっ、言うに事欠いてそんなことを言いやがる。

 どれ……だったら里帆や里奈ちゃん、氷海を抱く中で会得した揉みテクを見せてやる。


「んっ……♡」


 指を触手のように動かしてやると、萌果がツヤのある吐息を漏らしていた。今までだったらそんな声にだってなんとも思わなかったが、今は色気を感じてしまう。

 可愛いおへそや意外とむちっとした太ももも良いんだよな……。

 ヤバい……テントが……。


「あ……りゅー兄ぃ……」


 くそ……ソロキャンに気付かれた。


「ふーん……妹のことそういう目で見てるんだ……キモ」


 蔑んだ目でそんなことを言ってくる割に、萌果はなんの抵抗もしてこなかった……里帆と同じ系譜だな。結局ウラの顔がアレだから拒まないっていう……。

 

「(てか、どうせキモいならもっとキモくやってよ。物足んないし……)」


 そんなことをボソッと呟いた萌果が、傍らのスマホを手にしていた。

 そして、


「――りゅー兄ぃ、とりあえず自我オフ……」


 と、催眠アプリが起動されてしまう。

 ……来たか。


「……あたしの胸育てる気あるんなら、もっとえっちく触ってよ……里帆ちゃんたちの胸はじかに触りまくってるんだろうに、遠慮し過ぎ……」


 萌果がキスをしつつ、僕の手をスポブラの内側に誘導してきた。

 うお……。


「でっかい脂肪なんかより、あたしに依存しなよ……ほら」

 

 そんなじか揉みは序の口で、そのあとは可愛らしい蕾をちゅぱっと吸わされたりする始末……。


「へへ……りゅー兄ぃ、よちよち……♡」


 くそ……やっぱりキスだけじゃ済まないじゃないか……。


 それでも、ひとまず……今夜はこれだけで済んだことをここに記しておく。

 

 とはいえ、今後のエスカレートがお兄ちゃんは心配です……。


――――

つづく

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