第40話 買い物と矯正方法

 萌果が義妹だと判明した翌日、日曜日を迎えている。

 この日の朝はひとまず平和で、僕は体力を消費することなく部屋でダラダラ過ごしていた。

 萌果は部活に行ったし、里帆もそう。里奈ちゃんに関しては、僕のタンパク質が濃ゆい方が嬉しいようでチャージさせるために今朝は手を出してこないようだ(これは里帆もそうで、実は姉妹揃ってオ○禁を僕に命じてきているほどだ……)。

 でもせっかくチャージしても氷海とスる機会があったらその時点でチャージはご破算で2人に怒られる可能性がある……亜鉛サプリ、常飲すべきかもな。


 にしても、改めて昨日を振り返ってみると、萌果が催眠アプリを使ってくるとは思いもしなかった……さすがにひとつ屋根の下で怪しいことをしていれば、その情報を掴まれて仕方なし、ってことか。

 キスだけで我慢する、というのが萌果の弁だが、本当にキス以上のことはしてこないんだろうか……昨日の育乳時は実際いつも通りに終わったが、エスカレートしないとも限らないし油断は禁物だな。

 

「――琉斗くんっ、ちょっと買い物に付き合ってよ!」


 里奈ちゃんが里帆の部屋を伝って僕のもとにやってきたのは、そんな午前中のことだった。


「……買い物? 何を買いに行くんだ?」

「何って、琉斗くんはもしかしてもう用意してるの?」

「……用意?」

「明日おねえの誕生日だからプレゼント」

「あ」


 ……言われてみれば、である。最近色々あり過ぎて真っ当なイベントに焦点を当てる余裕がなかったものの、明日7月3日は里帆17歳の誕生日だ。

 それぞれの誕生日には毎年何かプレゼントを用意するのが僕らの慣習だ。明日は平日だし、今日用意しておくのが確かにマストだな……。


「あたしが誘いに来て良かったね? 琉斗くんが忘れてたらおねえメッチャ不機嫌になっただろうし」

 

 里奈ちゃんは身内のお祝い事を大事にするタイプなんだよな。意外と。


「じゃあ琉斗くん、一緒にプレゼント買いに行こっか?」


 肯定以外の答えがなかった。



   ◇



「……しかしプレゼントって言っても、里帆の今欲しいモノってなんだろうな」

「毎年のことだけど、安くて無難なモノでいいと思うよ? 祝ってあげるだけで上等なんだし」


 数十分後。僕らは電車での移動を挟んでショッピングモールを訪れている。催眠アプリを使わない平常モードの里奈ちゃんと出歩くのはすごく久々な気がして、なんだか調子が狂いそうだ。


「里奈ちゃんはもう何をあげるか決めてるのか?」

「第一候補はアロマかなぁ」


 とのことで、僕らは雑貨屋のテナントへ。


「んー、どのアロマが良いだろ」

 

 ひと口にアロマと言っても種類は豊富なようだ。匂いの種類もそうだし、湯船に垂らすバスアロマだったり、いわゆるアロマキャンドルだったり、マッサージ用のアルマオイルだったり、形態と用途も様々であるらしい。


「僕と里奈ちゃんで別々のアロマをあげればいいかもな」

「だね。じゃああたしはシトラス系のバスアロマにしよっと」

「なら僕は……」


 ……アロマオイルにしようかな。何回かマッサージをしているし、明日はオイリーに揉みほぐすのを誕生日プレゼントにしてみようと思う。

 そんなこんなでプレゼント選びはサクッと終わった。


「あ、このマグカップ可愛い~♪」


 引き続き雑貨屋の小物を自分用に見て回る里奈ちゃんの背中を、僕は保護者感覚で見守っている。こうしてショッピングに徹する姿は普通のJCなのに、そのウラでは僕に前門と後門を貫かれているド変態なんだよな……。


 ……別にド変態なのは良いけど、催眠アプリ依存が一番酷いのが気になる。里帆は催眠アプリを使わないでデートに誘ってくれたりして、依存しないように気を付けている部分も見られるけど、里奈ちゃんはダークサイドの力に呑まれ続けているから矯正が必要かもしれない。


 矯正方法があるとすれば……素の僕が里奈ちゃんにお戯れなことをして、別に催眠アプリなんて使わなくてもえっちな触れ合いは出来るんだよ、って悟らせる感じが良いだろうか。そうすれば次第に催眠アプリに依存しない里奈ちゃんを取り戻せるかもしれない。

 よし……なら早速里奈ちゃんにちょっとえっちなことをしてみよう。人目に気を付けながら、軽くショートパンツ越しのお尻を撫でてみる。こんなところでやるのかよ、って話だけど、こんなところでやるからこそ里奈ちゃんへのアピールになると思うんだ。


「――ひゃっ……りゅ、琉斗くん何してるの……?」

「可愛いお尻があるのに触らないのは失礼だと思ったんだよ」


 我ながら変態チックな言い草だが、これくらい言った方が催眠アプリなんて使わなくても僕とえっちに触れ合えるんだよ、という思いが伝わるはずだ。

 僕は里奈ちゃんのお尻をなでなでし続ける。

 里奈ちゃんの呼吸が次第にハアハアし始めてきた。


「だ、ダメだよ琉斗くん……そんなことされたらあたし、せっかくタンパク質をチャージさせようとしてるのに――」


 スッ、とスマホが取り出され、


「――我慢、出来なくなっちゃうよ?♡」


 あ……催眠アプリが起動されてしまった……。

 ……まぁでも、今回はこれでいいか。里奈ちゃんの催眠アプリ依存はちょっとずつ矯正出来ればそれでいい……。


 そんなこんなで僕はこのあと、モール内の多目的トイレに連れ込まれてしまう。そこで何をヤったのかと言えば、それはご想像にお任せである……。


「――じゃあ琉斗くん、お昼食べよ♪」


 そんな時間を終えたあと、僕は催眠の解除を命じられてフードコートにやってきた。一緒にラーメンを啜り始めた中で、里奈ちゃんが急に「……んっ♡」とえっちな声を出したことに気付く。


「……どうかしたのか?」

「えへへ……垂れてきちゃった……♡ って言っても、琉斗くんにはなんのことか分からないだろうけどね♪」


 実際、僕は何も分からないフリをする。はてさて、一体何が垂れたんだろうか……今食べてるラーメンのスープが、ってことかな?(すっとぼけ)



――――

つづく

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