第18話 覚醒
「ちゅ……んちゅ♡」
……僕と
出会い頭、僕は早速催眠アプリを使われてしまい、男子トイレの個室に連れ込まれていた……。
「琉斗くん……んっ、ズルいよ。あたしだって……ちゅ、むちゅ……休日に一緒にお出かけしたいんだから♡」
虚ろな演技を行う僕にべろちゅーをしまくりながら、里奈ちゃんが想いをぶつけてくる。
……やっぱり大人しいままなわけがなかったか。
里帆も性欲強めだし、血は争えないよなぁ……。
「ぷはっ……♡ へへ、とりあえずここまでにしておくね? 氷海さんをお待たせしたら悪いし」
そんな気遣いの心はあるらしい。
でもとりあえずここまでか。
あとあとが怖いな……。
「――うわっ、里奈ちゃんじゃんっ。おひさ~!」
「氷海さんすごい変わってて草! めっちゃ可愛い~!」
そんなこんなで、里奈ちゃんを連れてマ○ドナルドに戻ってきた。
「てか里奈ちゃんなんでアキバに居るの? オタ趣味じゃないのに」
「えっとねぇ、友達と一緒に地下アイドルの午前公演を観てきた帰りなんだよね~」
……ウソだ。
普通に僕のこと尾行してきただけだろ。
「あー、地下アイドルかぁ。それなら女子の追っかけも居たりするもんね。納得」
納得しちゃったよ。
……まぁ氷海には里奈ちゃんのウラ側なんて分からないもんな。
「ちなみに午後からは里奈ちゃんも一緒に来る感じ?」
「氷海さん的に迷惑じゃない?」
「全然。むしろせっかく里奈ちゃん来てくれたなら、あとで渋谷とか行って服見たいかも」
「あ、じゃああたしオススメのコーデを氷海さんに教えたげるっ」
なんて会話が繰り広げられ、僕が若干置いてきぼりに……。
まぁでも、そういう予定もアリか。
せっかくだしな。
そんなこんなで、ランチ後はアニメ系ショップを散策したのちに渋谷へ。
渋谷……僕は苦手だ。なんかもう、街そのものが僕に似合っていない。
陽キャの街。僕にそぐう場じゃない。まさに場違い。
ヤダなあ、怖いなあ、と稲川淳二にならざるを得ない。
オサレな男女が道をゆく休日の景色に心が折られそうだ。
スレンダーJCの里奈ちゃんと金髪ギャルの氷海に挟まれている僕は、もはや囚われた宇宙人みたいなモノかもしれない。逃げ場無しの四面楚歌である。
「あたしさ、服見たいのは当然として、何より下着が欲しいかもしんない。里奈ちゃんはどう?」
「欲しいっ。一応予算はあるし新しいの買っちゃおうかな~」
そんな会話をしつつ、2人が某109に突入していくので、僕も腹を括って中へ。
どうやら最初に下着ショップに行くようだ。ヤダなあ、怖いなあ。
「――ねえねえ、どうせなら琉斗が下着選んでくんない?w」
そして氷海がそんな不穏なことを言ってきやがった。
ヤダなあ、怖いなあ。
「あ、いいねそれっ。あたしも琉斗くんに選んで欲しいかもw」
里奈ちゃんまで……。
「そうと決まればレッツゴー!」
「いざ!」
「ちょっ……」
2人に連行され、僕はきらびやかな下着ショップの中へ……。
ううむ……目のやり場に困る。
こういう売り場の前を通るときでさえ、僕は意識して前を向いて絶対そっちを見ないようにする男だ。
なのに内部に入ることになってしまうとは……。
「さあほらっ、早く選んでよw」
「そうだよ琉斗くんっ、ほらほら!」
「じゃあまぁ……」
……こういうのはサクッと済ませて脱出だ。
僕はリーズナブルな価格帯のモノから、氷海には黒の上下、里奈ちゃんには白の上下をチョイス。
どっちもセクシー系じゃなくて可愛い感じのヤツだ。
まぁ氷海のは黒いからセクシーっぽくもあるが。
「じゃあ試着するから、感想ちょうだいねw」
そう言って氷海が先んじて試着室へ。
感想て……見せるつもりなのかよ。
「……里奈ちゃんも試着するのか?」
「うん、もちろん。けどその前に……」
スッ……、と里奈ちゃんが取り出したのは、スマホ。
しかもその画面にはなぜか催眠アプリ……!
なんで起動してるんだよ!
「じゃあ早速放心してね?」
マジでなんのつもりだこんなところで……。
「……あたしね、実は目覚めちゃったんだ」
目覚めた……?
「こないだ……おねえにお尻ぺんぺんされたあと、おねえと琉斗くんがなんか妖しいことしてたでしょ? そうやってお預けを食らう中で、目覚めちゃったの……好きな人が他の女子とえっちな戯れをしているところを見て悶々とする気持ち良さに♡」
!?
そ、それはなんだろう……寝取らせ趣味?
僕は別に里奈ちゃんのモノじゃないから厳密にはそうじゃないけど、にしたってそれは……業が深すぎるよ里奈ちゃん。
「だから琉斗くん……今から氷海さんの試着室に侵入しておっぱい揉もっか? あたしはその様子を見て悶々としとくから♡」
……僕の始めた物語は、とんでもないモンスターを目覚めさせてしまったのかもしれない(白目)。
――――
つづく
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