第16話 チャラ男断罪のお礼

 チャラ男を断罪してくれた里帆に直接的なお礼は言わない、と決めた僕だが、かといって完全スルーもどうかと考えた。


 なのでこの日の夜――


「なあ里帆、迷惑じゃなきゃマッサージさせてもらってもいいか?」

「……え?」


 夕飯後、僕が窓越しにそう問いかけると、里帆は戸惑った表情を浮かべていた。


「な、なんでマッサージ?」

「まぁ、最近のお前は助っ人として運動部の練習に参加してるわけでさ、疲れてるんじゃないかって思って」


 チャラ男断罪のシーンをコッソリ覗いていたとは言えないので、お礼というテイではなく、純粋に労るテイで行く。


「ふん……何よ殊勝なことを言い出して。本当は私の身体をお触りしたいだけなんじゃないかしら? スケベね」


 里帆は相変わらず素の僕には本心を隠している。なので今の言葉を意訳すると――良いわね、是非お願いしたいわ、ってところだろうか。


「ま、別にやって欲しくないなら、この話はなかったことにするが?」


 里帆の内心を理解しつつも、ちょっと意地悪にそう告げてみる。

 すると里帆は多少慌てた素振りで、


「や、やって欲しくないとは言ってないでしょっ。あなたがどうしてもやりたそうだからしょうがなくっ、仕方なくっ、広く大きな心で受け入れてあげようじゃないのっ」


 だそうで。

 やれやれ……ほんと、素直じゃないヤツ。

 ここまでテンプレなツンデレ女は滅多に居ないだろうな。


 そう考える僕をよそに、里帆が早速自分のベッドでうつ伏せになっていた。

 ……やられる気満々だな。

 なら、里帆の部屋に移動するか。


 ちなみに里奈ちゃんは友達の誕生日パーティーだかに出席中で、まだ帰っていない。だから横やりが入ることはないだろう。


「さてと……じゃあ始めるからな?」


 里帆の部屋に降り立ち、僕はベッドの横で膝立ちとなった。

 

「へ、変なところを触ったら承知しないわよっ」


 意訳すると、変なところを触れ、ってことか……。

 まぁチャラ男断罪のお礼だし、それとなく叶えてやるか。


 ともあれ、僕はひとまず普通にマッサージを開始する。

 里帆はすでに風呂上がりのようで、全身から良い匂いが漂っている。

 服装は半袖Tシャツとホットパンツ。

 寝そべるフォルムはえっち。

 里帆はおっぱいだけでなく尻もいいんだ。運動しているからか、安産型なのに垂れ知らず。さながらボイルした海老のようにぷりぷりだ。

 布越しにも分かるそんなぷりけつに目を奪われながら、まずは肩や背中をぐいぐい押していく。


「んっ……♡」


 えっどい声が漏れている。でも素の僕に痴態を晒すわけにはいかないからか、悶えるのを必死に我慢している感じだ。

 だったら……ちょっと乱れさせたくなるな。

 どれ、お望み通りにちょっと変なところを触ってやろうか。


 ――むにっ。


「きゃっ……ちょ、ちょっとなんでお尻を揉んでいるのよっ」


 そう、僕は里帆の尻をマッサージし始めた。

 くおぉ……すごい弾力。

 布越しの手触りはおっぱいより良いかもしれない。


「……イヤなら抵抗しろよな?」


 一応そう告げておく。

 しかしながら、


「ふん……まぁ、勝手にすればいいじゃない……」


 と里帆は結局大人しく無抵抗。

 ま……そりゃそうだよな。

 僕のことが大好きな変態なんだから、本当は尻を揉まれて嬉しいはずなんだ。


 なので僕は遠慮せず、引き続き尻を揉む。

 マジで手触りが良い。たまらん。


「んっ……んんぅ……♡」


 一方で里帆は枕に顔を押し付けて、漏れ出る声をめっちゃ我慢している。

 太ももをこすり合わせてモジモジ中でもある。

 そんな様子は……なんだかクるモノがある。

 内もも付近を指圧してみると、一段とビクビク震え出すのがもうえっち。


 ダメだ……これ以上は僕の理性が崩壊する。

 僕は指を膝裏やふくらはぎの方に移動させ、まともなマッサージを再開した。

 そこからは真っ当に労りの指使いを続け――


「よし……こんなもんでどうだ?」


 足裏まで満遍なく揉みほぐしてマッサージ終了。

 そんな中で里帆はゆっくりと身体を起こして、


「……ありがとう。気持ち良かったわ」


 そんな言葉と共に、枕元のスマホを手に取っていた。

 そして――


「じゃあ今度は――私の番ね♡」


 ……画面には催眠アプリが起動されていた。

 これはまぁ……予期していたことと言える。

 しょうがないな、受けて立とうじゃないか……。


 こうして虚ろな演技を強いられた僕はネットリとした指圧マッサージを続けられ、もの凄く生殺しにされたことをここに記しておく……。

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