第9話 お前もか
「――ん♡ 良いわ琉斗、その調子よ……♡」
あくる日の昼休み。
里帆から非常階段に呼び出された僕は、催眠アプリを駆使されて里帆の制服越しにおっぱいを揉まされていた。
この幼なじみ……学校で僕と危ういことをするのにハマってしまったご様子だ。
本当にド変態過ぎる。
それに応じる僕も僕だが、演技だとバレないためには致し方ない。
まろび出た豊満なおっぱいはもちろん揉みごたえ抜群だ。
時速80キロで走る車から手を出したときの空気抵抗がおっぱいの感触と同じって話があるけど、本当にこれと同じ感触がするんだろうか?
じゃあ暴走する車からち○こを出せばパ○ズリされてるのと一緒?
んなバカな。誰か試してみろよ。僕はやらないぞ。
「ねえ琉斗……キスもしなさいね?♡」
そんな中、唐突に追加命令が飛んできた。
揉みながらキスしろ、って……こいつはホントにスケベだな。
まぁでも……僕としてもイヤじゃないからな。
演技バレを防ぐためにはしょうがない。
さて……。
「んっ……♡」
僕の方から命令通りにキスを行う。
たまらない……でも演技だから自我は出せない。
淡々と。舌とかは出さずに。懸命にやるのみだ。
「ふふ……もっと私に夢中になりなさいね? おっぱいもいっぱい揉んで、私のおっぱい洗脳に毒されてしまえばいいわ♡」
……相変わらずおぞましい計画を進めているようだが、その計画にはあえて引っかかってやってもいいのかもしれない。そんな風に思う僕なのであった。
◇
その後、昼休みの終わりが近付いて解放された僕は、午後の授業を乗り越えて放課後を迎えることになる。
僕は帰宅部だ。小学生時代からずっと放課後の自由を満喫している。
一方で里帆は、僕と違ってアクティブだ。部活には入っていないが、運動神経の良さを買われ、初夏に差し掛かると女子運動部から大会に先駆けての助っ人として引っ張りだこになる。里帆は学校だと女子に対しては聖人キャラだから、この時期はその申し出を受け入れて練習に参加することが多くなるんだ。
だもんで、6月に切り替わって夏に向けた練習が本格化するこの日から、里帆の放課後は忙しくなるのが常。
今日の放課後はテニスコートで里帆の姿を見かけた。
ポロシャツとハーフパンツ姿で準備運動をする里帆は、長い黒髪を後ろでまとめて凜々しい雰囲気を伴わせている。周囲には女子テニス部の仲間が集まって、談笑中。
こうして見ると真っ当過ぎるほどに真っ当な、人望に満ちた美少女だ。
よもや幼なじみの男子に催眠アプリを使いまくるような変態だとは思えない。
ともあれ、怪我だけはしないように頑張って欲しいもんだ。
そう考えながら僕は下校した。
やがて帰宅した我が家は無人。
妹の萌果は水泳部だし、放課後は大体こんなもん。
「――琉斗くんやっほやっほっ!」
そんな僕のもとに里帆の中2の妹・里奈ちゃんが顔を出してきたのは、お菓子とジュースを用意してゲームでも始めようとした矢先のことだった。
「見て見て! 今日から衣替えだったからクールビズ!」
と、僕が通っていた中学の夏服姿でくるりと回った里奈ちゃん。
長めの黒髪ツインテールを揺らしながら、僕の隣にストンと腰を下ろしてくる。
「ねえねえっ、いつも通りこの部屋で宿題してもいいっ?」
「あぁ、お好きにどうぞ」
「やったー!」
姉の里帆と違って、里奈ちゃんは性格は騒がしいけどインドア寄りだ。
だから部活にも入らず、僕と同じで帰宅部。
暇さえあればこうして顔を出してくるのは、別に珍しいことじゃなかった。
「ふぅ、それにしてもあっちーねぇ」
ゲームを始めた僕の隣で、里奈ちゃんはローテーブルに向かいながら短めのスカートをパタパタさせている。可愛い真っ白ショーツが丸見えである。
「はしたないぞ」
「でえじょーぶ。こういうことは琉斗くんの前でしかやらんし」
「……なんで僕の前ではやるんだよ」
「えー、言わせるつもりー?」
なんてニヤニヤする表情はメスガキチックだ。挑発でもするように引き続きショーツを見せ付けてくるもんだから……ううむ、ゲームへの集中力が保てない。ターン性RPGでもやってるならまだしも、FPSだからな。
「里奈ちゃん……ちょっと大人しくしてようか」
「じゃあさ、あたしのこと押し倒して口にチューしてくれたら大人しくしとくw」
「なんだそりゃ……」
里奈ちゃんは普段からほっぺにキスしてきたり、里奈ぱいを見せてくれるくらいスキンシップが激しいけど、それは単純に僕をイジってからかっているんだと思っている。今もそうだろうな。
「……いざ実際にマウストゥーマウスしたら怒るんだろ? 知ってる」
「いや怒んないし」
「絶対怒るだろ」
「怒らないってばっ」
「だとしても、そういうのは好きな人とでもやっとけ」
「ふぅん……あっそう。やっぱ琉斗くんって、こんだけ熱心に接しててもあたしに対してそういう認識なんだ? こりゃ真っ当に接してたらいつまで経っても暖簾に腕押しだね」
「え?」
「だからあたし……――悪魔に魂売ってみるもん」
そう言って里奈ちゃんが懐からスマホを取り出していた。
その画面には――見覚えのあるぐるぐる。
(――っ、そ、それは……!?)
「ねえ琉斗くん――」
里奈ちゃんはそのぐるぐる――催眠アプリを僕に見せ付けながら、
「あたしのこと、押し倒してチューしてみてよ」
どこか迫真の表情で、そう言ってきたのである。
――――
つづく
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