Brain fog / 栃池 矢熊 作

名古屋市立大学文藝部

Brain fog

俺は孤独

まわりには誰もいない

人と話さなすぎて

頭がおかしくなりそうだ




頭が重い

そして痛い

上からのしかかるように

中から突き上げるように

襲ってくる不快感


でもこれは

俺のせいではない

きっと誰かが

俺の頭を

攻撃しているのだ

そいつは誰だ

一体誰だ

俺の頭を

痛める奴は




頭を攻撃するのなら

敵がいるのは上かもしれぬ

上を|睨(にら)みつける

|梁(はり)がある


梁は屋根を支えている

でもそれは本当か

梁なんてただの棒なのだから

梁では重い屋根など支えられないだろう

つまり

何か別のものが屋根の重さを背負っているのだ

ではそれは何か

そうだ

俺の頭だ

屋根本体から質量が分離し

それが俺の頭に乗っかる

だから頭が重いのだ

そうに違いない


梁が支えきれない屋根の重さがのしかかる

俺の頭に

ズシン、と

俺への害意があるのなら

敵は俺を見ているかもしれぬ

視線を感じて振り向く

扇風機がある


扇風機は電気で動いている

でもそれは本当か

電気なんて目に見えないのだから

電気で扇風機が動くことなど証明できないだろう

すなわち

扇風機の動力源は電気以外とも言えるのだ

ではそれは何か

そうだ

俺の頭のエネルギーだ

見えない管を頭に刺され

そこからエネルギーを奪われる

だから頭が痛いのだ

それしかあり得ない


扇風機がエネルギーを吸いとる

俺の頭から

チューチューチューチューと




今日も頭は平常運転


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