曖昧な欲

足立区女子のすゝめ

kind of みたいなやつ

英語でいう" kind of "みたいなのに、たまにモヤモヤさせられることがある。カナダに1年間留学していた際、最もよく使ったフランクな日常英語のような気がする。「なんとなく」や「なんか、そんな感じ」という意味で、" kind of "を" kinda "と略すこともある。とりあえず困ったら使うフレーズで、なんとも曖昧だなと感じていた。


外国人風ヘアーとか韓国風ヘアーみたいに、曖昧な表現が使われているサロンの謳い文句も、なんだか腑に落ちない。「結局、どういうこと?」って感じだし、その垣間見える曖昧な欲をどうにかしてほしい。なんか、もっと具体的に書いてほしいなって。そんな私には、全部のサロンメニューの出来が外国人風ヘアーに見えてしまう。それなのに、外国人風ヘアーを謳っているメニューは他よりも割高なのだ。


「これって、どこがどう外国人風なんですか?」と聞ける勇気もない。そんな日に限って、お風呂上がりに前髪が絶妙にズレてカットされていることに気付く。そして、前髪の数ミリのお直しの為だけに、また美容室へ赴く。そこが初回の安さ目当てで入った美容室ではなく、何度か行ったことのある顔馴染みの美容室だと殊更、気まずくなる。夏の夜空に流星が瞬く間に流れ落ちて行く感覚でモヤモヤがショートカットされて行っているような気がして、思考と感情が追い付かない。これが " kind of " なのか?


逆に" kind of " じゃなさ過ぎて、顕示な欲が露呈しているのも嫌だな。銀座のクラブや美容クリニックに自分の名前を付けてるのとか。漢字でもカタカナでもなく、大体がアルファベット表記で最初の文字だけ大文字。それが最高潮の顕示な欲じゃないのかなと、ここ最近感じた。顔出しインスタグラマーの上位互換でもある。


私は、そんな女とは上手くやっていけないような気がする。「私はこんなにも成功を収めて、顕示な欲で塗れてますよ」って自己紹介しているも同然だからだ。自ら顕示な欲を露呈すると、支配下に置きやすい属性としか通じ合えない。逆に相手の顕示な欲を承認すると、自分への支配を受け入れることになってしまう。その世界線では、絶対に対等な人間関係を築くことは不可能なのだ。


不完全燃焼な曖昧な欲か、燃焼され過ぎた顕示な欲か。両者の均衡を保つのはなんとも難しい。でも、そこには必ず程良い欲があるはず。これからも両者にモヤモヤさせられることはあるだろうけど、" kind of " が物凄く便利なことには変わりない。

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曖昧な欲 足立区女子のすゝめ @kurokawanotecho

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