幸せなディストピア

幸せなディストピア

　諸君は既存のディストピアが非合理的だと思わないだろうか。たとえば富をすべて徴収し力を抑圧すれば民衆は国家に反抗できず、国家は民衆をコントロールできる。しかしそうすれば民衆の労働意識は低くなり、自由な国家に比べ経済的にも文化的にも劣るだろう。では仮に民衆に対して経済的、社会的自由を許し民衆が経済的にも豊かになればどうだろうか、民衆は経済的に豊かになるのか。しかしそうすれば他の国家の政治的自由や非ディストピア的政府を知った民衆はそのディストピア政府に対して民衆が持つ自由によって得た資金や力をもって反政府運動を行う可能性がある（前述した自由がない民衆の場合力がなく政府に反抗できない、またはそもそも他国を知ることができない）。

　では真のディストピアとは民衆を管理し経済的にも強力な国家を維持し、反政府運動がなく安定した独裁体制を築くことである。まず民衆が仮に外界に触れたとしても自分が属す国に反抗や不満を持たないように強いプロパガンダを流せばいい。強いプロパガンダを持続的に民衆に対して影響させ潜在意識にもプロパガンダが染みれば家族間や友人間との会話にも潜在的なプロパガンダが含まれるだろう。仮に国際社会から非難され民衆の自由意志が害されたとしても人間に真なる自由意志など無い、人間は常に周りに影響されそれが伝染していくのだ。つまり民衆はは自らの意思でプロパガンダを好み、自ら友人間でも共有するようになる。

　では民衆をコントロールするにはどうするだろう、民衆にマイクロチップや何らかのアクセサリーなどに位置情報やすべての記録装置を埋め込みそれを義務化したらどうだろうか、他にも高度な監視カメラやドローン、AIを駆使し国家全体に張り巡らせすべての電子機器に国家がアクセスしすべてが監視できる監視社会を構築すれば犯罪を防ぎ民衆が安全で安心できる社会が実現できるだろうしその民衆は他国よりも幸せと思えるのではないかと、そしてそれはユートピアと言えるのではないかと私は考える。しかしながら、未来では話は別だが現在の技術では限界がある例えば自律的なドローンほ普及させ何十万、何百万と配備し管理するのは難しいだろうしAIも現在のところ万能ではない。

　現在の技術で可能なことはプロパガンダ、位置情報などを収集できるアクセサリー、監視カメラである。しかし我思うこれはもう我々の世界に存在していると、高度なプロパガンダを受けた者はそれに気づくものは少ないだろう、そのアクセサリーはスマホや携帯は完全に同じ機能を備えほとんどの人が保持し持ち歩く、監視カメラは防犯の名目で町中にある。そう先進国はこれに該当しているのだ。我々が気づく前に真の幸せなディストピアは近い未来に、いやもうすでに存在するのかもしれない。