花を愛した画家

貴族様。

彼女は私たち一市民とは違う、裕福な服でその身を包んでいた。

花好きとは聞くけれど、ここまでとは。

あの無理矢理押しつけられた依頼では、確か白髪の美少女だっけか。


筆に魂が乗っ取られたかのように次々と描いては、何か違う。と自身の回りにポイポイ投げ捨ててゆく。


「貴方、ここの管理人かしら?」


そこら辺に捨ててある絵を鑑賞していたら、気がつけば目の前にまで美少女様がきていた


「いえ。そういう訳ではないです」


多分、腰にある麻袋に入れた、今にも溢れそうな薬草たちを見てそう言ったんだろう。

薬草と雑草は素人目には分かりにくい。


「ふ~ん?なら、もっと不思議ね。この花畑が、誰の手も必要としないで存在し続ける、なんてね。」


それはきっとこの花の生まれつき持つ魔法なのだろうが、魔法とは?という長々とした説明を挟まないといけないため、笑顔で答える


「...貴族様は、花が好きなのですか?」


とりあえず、そろそろ家に帰るために、二つ返事で会話を切れる話題で帰るか。


「ええ、好きよ。」

「そうですか、町では貴方様の捜索依頼が出されているそうですよ?それでは。」


もう話すことは無いと踵を返す。

興味本位で受け答えはしたが、よくよく考えれば貴族達に関わるとトラブルに巻き込まれない。


「少し待ちなさい」


逃げ切れなかったか。


「この絵を私の部屋まで送ってほしいの」


そう言うと、自信作であろう絵を私に手渡してきた。ああ、お使いかぁ。


「承知しました。では」


ずしりと重いキャンバスを背に乗せて、町へと向かう。

絵の具をふんだんに使ったであろう絵画は、淡く光る白い花が描かれていた。

確か花言葉は..まだ見ぬ探求だっけ?

では、探求とやらを部屋まで届けなければ。貴族様のお願いだからね、仕方ない。


町へたどり着くと、門の前で腕を組みながら貴族様がたたずんでいた。

あー困ります。何で依頼を受けた事に。


「おい、魔女。後ろのキャンバスはなんだ」


「...ただの花の絵ですよ?」


うん。見せろって事だよね?

でも、同じ貴族様の依頼だから無視無視。

貴方のかわいー妹さんからのご依頼なんで、それじゃ横を失礼っと。


「待てと言っている。見せてみろ」


そのまま通り過ぎようと逃げ出した。

しかし回り込まれてしまった!


「見せろ」


と強引にキャンバスを私からひったくると、そのキャンバスを手に取るやみるみる顔が青ざめて行く。


「お前、俺の妹はどこにいる。なんで連れ出さなかった?」


はぁ、と心の中でため息をつく。

私、仕事の後でとても疲れているんだけど。

仕方ないので道案内だけして帰るかー


「あっちの方向を歩きで4時間ほどで森から花畑になります。そこにいます。それと、ご依頼は前金を受け取らないと開始と見なされないです。ご依頼は冒険者ギルドで行われては?それでは、”我、指定位置に転移"」


貴族様の意識がキャンバスから私に切り替わり怒鳴りつけようとした瞬間の数秒間の硬直の後、私は家に帰還した。


「...ねるか。」


何だか今日はとても疲れた。

全て自動で服を洗ってくれる魔道具の中に、ぽいぽーいと服を投げてベットにダイブする

この衝撃で多分親父に家に魔法で帰ってきたことがばれるだろうから、その前に寝てしまおう。

朝まで酒に飲まれた人の相手をすると明日に支障が出る。

では、おやすみ。


◆◇◆◇◆◇◆


まぶしい光が私に起きてと訴えます。

朝です。

今日は普通な一日でありますように、と私はぐぐぐと腕を伸ばす。

朝からお仕事お疲れさまな衛兵達とは違い、のんびりティータイム。

むふふ、魔女で良かっ...


「おい。お前呼び出し依頼が出てるぞ。朝からお前のこと探しに衛兵は三回もきたぞ。

一体何をしたんだ?お前。」


のんびりしようとした矢先、部屋のドアを破壊しそうな勢いで開ける親父。

一応私女性だからね?

あーまだ酒抜けきってなさそうだね?

...今日ものんびり出来なさそうです。


「寝る。」


面倒なときは二度寝!現実逃避最高。


「だめに決まっているだろう」


「ですよね~」


仕方ないので玄関の前まで嫌々移動する。

はぁ、とため息を吐き、服のリボンはキチンと堅く結ぶ。

じゃぁ、行ってきます。

キュッと結ぶとともに少し古い木製のドアを押す。

少しドアが重たく感じた。

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魔女の花言葉 立秋 @r1ssyu

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