魔女の花言葉
立秋
貴族様の願い
まぶしい光が私に起きてと訴えます。
朝です。
今日はとても良い一日になりそう、と私はぐぐぐと腕を伸ばす。
朝からランニングやら剣の稽古やらで大忙しな剣士たちとは違い、のんびりティータイム
むふふ、魔女で良かった。
「おいおい、起きたら早く仕事してくれないか?し、ご、と。」
むぅ、今日は昨日の半分もダラダラ出来なかったなぁ。
「あや~。か弱い乙女にあの筋肉たちにまみれて一緒に働けと言うのですか?」
「そうだ。さっさと森に行ってこい。」
...このはげ親父は魔女の価値を分かっていない!もっと優しくするべきだ!断固拒否する
「おいおい、働きたくないって顔だな。でも残念なことに魔女であるお前さんにしか出来ないことがある。やらないとお前の唯一の宿であるここが無くなる。」
はぁ、といつものようにため息を吐き、服のリボンはキチンと堅く結ぶ。
こう説得されると分かっているから数年前から仕事着で寝ている。
だってその方が楽だし...
キュッと結ぶ音とともに少し古い木製のドアを押すまでが私のいつものルーティンだ。
「あー、なんか騒いでますねー」
ただ今日はいつもとはちょっと違う。
「おいアンタ。魔女なんだろ?金は払うから、人捜しの依頼を受けてくれないか?」
貴族に、絡まれた。
大体こういう面倒ごとは何かしらの命に関わるトラブルの元だったりする。
後ろの衛兵さんも貴族様だから引きずって運んでくれそうにないし...
なら、
「え?私人捜しの魔法使えないんですが」
「アンタ魔女なんだろう?中級魔法だから、魔女なら使えると思うんだが。」
あーこの人アレだ。勉強してないね。
魔法使いはあらかじめ文章として魔法を使うから魔力が高いイコール強いなんだけど魔術師は違う。
単語や文字一つ一つを理解しているからクセがあって得意分野というのが生まれてくる。
説明する時間も惜しいなぁ...
「サガーシ様。領主様が呼んでおられるそうですぞ。」
「お怒りだそうです。さぁ、行きましょう」
「なっ!いやだ!父上のところになんか!」
モゴモゴーウゴゴゴーと暴れる貴族を取り押さえる衛兵たち。
大変だねー衛兵って。
「探してるのは妹で白髪で顔は世界一かわいいんだ!頼んだからなー!」と、引きずられながら言い放つサガーシ様。
貴族様、私依頼受けて無いですよ?
と、こんなことしている場合では無かった。
薬草の採取をしに行かないと。
誰かさんのせいで走る羽目になった。
つらい。
森の中は魔物と呼ばれている生き物達が生活している。魔物と動物の違いは、魔法を使えこなせる者とそうでない者というだけ。
でも、ただの動物と言っても油断してはいけない。何故なら、全ての生命は魔力を生まれつき持っていて、その全てが個体差あれど、
魔法を使えるからである。
「まぁ、だからと言ってむしりとられるこの哀れな薬草は、私に一矢報いることは出来ないのだけれどもっ!」
現在私は森の奥にあるとある花畑で薬草の根っこと戦っている。
戦うと言っても寝起きの私が布団をなかなか手放さないように、地面にがっつりと張られた薬草の根っこをブチブチと引っ張っている訳なのだけど。
「森の奥にきれいな花畑があって、そこにこんなに薬草が生えているなんてね。」
お金が目当てと言わんばかりに花には目もくれず、薬草を引き抜く様子はまさにこのお金になる草たちにとっては恐怖でしか無いだろう。
でも、そろそろ疲れてきた。
この薬草たちの魔法は根っこの強化と自己再生。私達はこの根っこの強化に苦しめれ、自己再生に助けられてきた。
こいつはいい回復のポーションになる。
うん、このくらいでいいか。
私が採取を終えて休憩をしていると、花畑の奥に人影が見えた。
「同業者かな?」
ここ数年通いつめているが、人がいるところを見たのは初めてだ。
うん、話しかけてみるか。
「すいませーん?」
人かと思って話しかけてみたら、なんと醜い顔のゴブリンでした!みたいな話はよく聞くけれど、なんということでしょう。
「...貴族サマかぁ。」
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