第7話 別れ

絵里は海外に住んでいる彼氏(新)に電話をした。


「もしもし。千夏?」

新は嬉しそうな声を出した。

「新…」

「?どうかした?」

千夏の携帯を持つ手が震えていた。

「…何かあったの…?」

新は心配そうに聞いた。

「…新、あのね」

「ん?」

「ごめん…」

「…何が?」

新は嫌な予感がした。

「…好きな人が…できた」

「…」

「…ごめんなさい…」

「なんで…」

「…」

「…誰…?」

「中学校から一緒の…小林大和って言う…」

「…アイツかっ…」

新は一度、大和に会った事があった。

新は携帯を持つ手に力を入れた。

「なんでだよ…。…遠恋ももう少しで終わりだったじゃん…」

「…ごめん…」

「なんで、もうちょっと待っててくれなかったの?」

「私も、そう思ってずっと…、待ってるつもりだった…」

「…つもりね…」

「ごめんなさい」

「…俺には一切気持ちなくなったの?」

「…」

「悔しいな…」

「…ごめん…」

「俺だけ…好きで…バカみたい…」

「ごめんなさい…」

「好きだよ…」

新は苦しそうにつぶやいた。

「ごめん…」

「愛してた…」

「……ん」

「…」


長い沈黙が続いた。

「はぁー…」

「え…」

「もう無理なんだもんね」

新は吹っ切れたように言った。

「…ごめん…」

「ごめん以外言えねーのか」

新は初めて笑った。

「……」

「ごめんを封じたら、何も言えないのか…」

「…あ…」

「…相変わらずだな」

「どこが?」

「単純バカな所」

「そんな事ないもん」

「お、喋った」

「もう」

「小林の前でも…、こんな風に自然にいられるの?」

「うん…」

「そっか…。わかった。…千夏」

「うん」

「…別れよう」

新はそれだけ言って電話を切った。

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理屈じゃない恋 Nobuyuki @tutiyanobuyuki

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