第6話 だって、キスしてたよ

「千尋〜」

心美は千尋達がいる公園へ着いた。

「何?」

「あのね、お兄ちゃんと千夏ちゃん付き合ってるんだよ」

「…そんなわけないじゃん」

千尋はボールをつく。

「ホントだもん」

「違うよ。友達でしょ?」

「だって、キスしてたよ?」 

「え?!うそ!!」

千尋は勢いよく心美を見た。

「ホント、さっき見た」

「さっき?!」

「うん」

「だって…。千夏…」

(新君は…?)



「ただいま…」

千尋は家の玄関を開けた。

いつも通り手を洗ってリビングへ行くと、千夏がキッチンで料理を作っていた。

二人は目が合うと、0.5秒停止した。

「あ、お帰り」

「千夏…」

「何?」

心なしか千夏の顔が緊張していた。

「…なんでもない」

「そう」

千夏の緊張が解けた。


「…ね。新君っていつ帰ってくるの?」

「え…」

千夏は顔が強張った。

「…9月だと思う…」

「じゃ、もうすぐだ」

「そうだね…」

「楽しみだね」

「そうだね…」


「千夏さ…」

「ん…?」

「大和君と仲いいよね?」

「あ、うん…」

「そっか」

「…ごめん…」

千夏は申し訳なさそうに言った。

「うん…」

(やっぱり、大和君が、好きなんだ…)

「千夏、早く…、言ったほうがいいよ…?」

「え…」

「電話で…」

「うん…」

千尋はそれ以上何も言わなかった。



次の日、学校が終わり千夏と大和は一緒に帰っていた。

「大和」

「ん?」

「私が、大和を好きなの、千尋にバレてる」

「そうなの?なんでだろ」

「私、顔に出てたかな…」

「嘘つけないもんね」

真実は、大和が不用意にキスをして、心美に見られたからだった。

「どうしよ…」

「何が?」

「千尋が、早く彼に言ったほうがいいって」

「そうだね」

(彼って…。彼氏、俺じゃん…)

「だめだ…」

「何が?」

「言えない…」

千夏は頭をかかえた。

「…何で?」

「…怖い」

「…責められるのが?」

「うん…」

「…じゃ、どうするの?」

煮えきらない千夏に大和は少しイライラしていた。

「…」

「早く言わないと、逆に "元" 彼に失礼だよ」

大和は、"元" を強調した。

「うん…」

「…俺と別れるの?」

大和はわざと意地悪く言った。

千夏は大きく首を振った。

「じゃ、千夏も腹くくって」

大和は千夏の顔を見つめた。

千夏は小さく頷いた。と

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