終章

 昼過ぎ頃、アリア達はリゼーヌ村の宿屋を出た。外に出れば、村の両道に立ち並ぶ店々にいる店主の声や、行き交う人々の声や足音が混ざり合い、春の心地良い風によって、それぞれの耳に届きゆく。


「アリア、体調はどうだ?」


 宿屋を出て少し経った頃、アリアの隣に来たミカルがそう声を掛けてくる。


「大丈夫ですよ」

「そうか、ならよかった」


 ミカルは少し安心したように、優しい笑みをこぼす。アリアはそんなミカルを見て思う。

 きっと、ミカルではなかったら、自分の持つ力を打ち明けてまで、守りたいとは思わなかったかもしれない。

 ミカルのことを守れるように側にいるという選択をするには、村に一度、帰らなければならない。忘れかけていたが、ベルディに頼まれていた茶葉も渡さなければ、いけないのだった。


「ミカル王子、私、一度、村に帰ります」


 アリアが立ち止まりそう言えば、ミカルとミカルの騎士達は顔を見合わせて声にする。


「行く先もまだ、決まってなかったな。じゃあ、俺達も行くとしよう」

「そうですね」

「殿下はアリア殿の故郷に行きたいだけでは?」


 まさか着いて来られることになろうとは思っていなかったアリアはえっ?と思わずに聞き返してしまった。


「アリア、ほら、立ち止まってると置いてくぞ。というか、ティゼ村の行き方教えてくれ」

「わかりました!」


 目の前にいるミカルとミカルの騎士達。ディオール、グレイ、シバン、リドの四人の姿をアリアは紫色の瞳に映し、歩き始めた。

 アリアとミカルが陰謀の渦に巻き込まれていき、大きな出来事に繋がっていくことになるのは、また別のお話。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

双翼のアリア 藍瀬なゆる @__Nayu__ru__

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ