第34話 別働隊

 ラヴァとシーカー含むS級パーティが闇ギルド本部に奇襲をかけたと同時に、別働隊であるギルバート達が立ち上がった。


「シロ、俺達もでるぞ」

「わかった」


 別働隊は偵察ができる遠視スキルを持つ者と感覚共有ができる者がヨナに付き敵を捕捉、高速で移動できるシロとギルバートが逃走先の出口まで走り捕縛するというとんでもない作戦だった。


 それを実現できるのがギルバート率いる別働隊、ギルド長であるギルバート自身が選んだB級以下の精鋭パーティである。


「出たあとはサウンズに位置を報告してくれ、もっと人数かけれりゃ楽できたんだけどな」

「しょうがないっすよギルド長、下手に人増やすよりギルド長が出たほうが確実ですから――いてっ!」


 笑いながら言うギルドメンバーの頭に鉄拳が落ちる。


「お前らが真面目にやってりゃ俺が出る必要なんてねえんだよ。見てみろ、新人どころか受付嬢が前線にいる始末だ!」

「すんませんって、頭が凹んじまいます!」


 その光景を見ていたヨナは心配そうにしていたが、作戦開始を告げられて遠く山の下にある闇ギルドの本部を見据えた。


 竜人は人より視力が良いが、夜目がきくだけで遠くが見えるわけじゃない。そんなヨナの目に、まるで山が目の前にあるような光景が広がる。


「すごい……これが遠視スキル」

「よく見えんだろ、頼んだぜ混血の嬢ちゃん。ギルド長の前で恥かきたくねえからよ」

「ヨナです」

「ん……?」

「嬢ちゃんじゃなくてヨナです、同じギルドの仲間ですからそう呼んでください」


 感知に集中しつつもそう言うヨナに、座っていた男は頭を掻きながら立ち上がってヨナの肩を叩く。


「んじゃ頑張れヨナちゃん。俺のスキル貸してんだ、一人たりとも見逃すんじゃねえぞ」

「はい、ありがとうございます!」

「俺も頑張ってんだけどなぁ……」


 話す二人の後方で感覚共有スキルを使用している男の嘆きは誰からも反応されなかった。


「ヨナ、見えるか?」

「……いました、北東に5人!」

「よーし行くか。手加減してくれよシロ、老いぼれの運動は腰にくるんだ」

「嘘、あなた僕より早い」

「そりゃあ三年前ぐらい前ならそう言えたかもな――いくぞ」


 走り出した姿すら見せずその場から消えるギルバートとシロ。気づけば遠い山を高速で移動する2人姿がヨナの目に映り驚愕した。


 後方に構える2人とサウンズだけは当たり前のような顔をしている。


「す、すごい……人間なのにシロさんの隣を走ってる」

「集中しろよヨナちゃん、俺達はあの化物に指示する側だ」

「見つけたらこっちに報告してくれ、俺から伝える」

「はい!」


 一方、ギルバートとシロはすでに山の北東出口と思われる洞窟の前までたどり着いていた。


 誰も知らないと思っていた闇ギルドの所属者がやっと見つけた出口の先に二人の見合わない男女が立っていることに驚き、寸前で止まる。


「来たな犯罪者共」

「ここ、通さない」

「な……!?」

「ギルドの野郎か、そこをどけぇ!」


 武器を取り出して襲いかかる5人に対して、シロを背に守るような体勢になったギルバートが、振りかぶって地面に拳を叩き込む。


「うおっ……!」

「なにしてやが――」


 その衝撃で地面が割れ洞窟が揺れる。パラパラと落ちてくる天井が一人の頭に落ち見上げると、割れた地面から伸びるヒビが壁や天井を伝っていた。


「崩れるぞ、死にたくなきゃ出てこい」

「うわあああ!」


 洞窟が崩れ命からがら飛び出してきた五人を殴り倒し捕縛。五人確保をサウンズへ連絡するとヨナが見つけた次の場所の位置を指示された。


「――あいよ……あいつらギルド長をこき使う気だな」

「次どこ、僕のほうが早く着く」

「いいねぇ、じゃあ全員で捕縛するまでどっちが早く着くか勝負だ」


 闇ギルド本部を襲撃しているという状況でまったく違う勝負が始まるほどの余裕があったことをラヴァ達が知るのはまた先の話だった。

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役立たずと追放された混血の竜人、竜王の実娘でした〜私は気にしていないのに周りが勝手に復讐してる……なんで?〜 蛾々らんまる @gagamaru

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