第33話 闇ギルド本部
「サウンズ、これから本部に奇襲をかける」
『わかりました、ギルバートさんへ通達します』
レイラが音響魔術師のサウンズを経由して状況を伝えると、しばらくして返事が帰ってきた。
『別働隊、準備が整いました。作戦を開始してください』
「よし……私が正面、左右は任せた。シーカーは逃げる敵の位置をできる限り索敵、ラヴァは護衛だ」
「了解!」
「腕がなるな、久しぶりの戦闘だ」
構えた剣を振りかぶったレイラが目の前の重厚な扉をいとも簡単に切り裂くと、粉々に砕けた先の部屋には多くの闇ギルド所属者の姿。
私は護衛だから見ているだけなんだけど、これだけの数を三人で制圧するというのも不思議な話だ。普段はなにと戦っているのか気になるよ。
突然に切り崩された扉2注目して驚く中の人達は大声で叫んで武器を構えた。
「なっ!?」
「侵入者だぁ!」
「くそっ、なんでこの場所がバレた!」
さてと、せっかく見れるんだからSランク冒険者の戦い方ってのを見せてもらうか。
「全員、武器は持ったままでいい……一列に並べ」
「誰が従うか――あぐっ!」
「そうか残念だ。カルラ……やれ」
「『縛れ』」
たった一言で発動された魔法は、壁や天井から光の紐が飛び出してき敵の体に巻き付いた。拘束したと言うほどでもないけどまず逃げられない、これがSランクの魔術師か。
同時に駆け出したレイラが魔法に気を取られている敵に剣や当て身で攻撃して、一撃でバタバタと倒れていく。
「魔術師に騎士、だがその程度で俺達が諦めると思うな!」
「おじさんを忘れてもらっちゃ困るぜ」
「荷物持ちか、ただの人間なんてぶっ殺してやる!」
おおきく振りかぶった槌が、ステラの頭目掛けて振り下ろされる。巨漢のステラであっても木槌で頭を打たれては怪我はするだろうと少し構えると――木槌を頭突きで叩き割った。しかも止まることなく敵の頭にそのまま頭突きを繰り出すと、奥の壁まで吹き飛んでいく。
「鉄製の槌がなかったことを恨め!」
「ステラの頭突きを食らうなんて想像したくないね……」
カルラが小さく呟いたあたり、相当な石頭のようだ。もはや鉄でも砕きそうな勢いがある、私の鱗とどっちが固いんだろう。
「みなさん三人逃げてます! 左の扉に!」
「索敵までいるのかよ! 先にあいつを潰せ!」
逃げた敵の位置を教えたシーカーに注目が集まり、即座に投げナイフが飛んできた。
これは私の仕事だ、しっかり守ってやるつもりでシーカーの前に立ってナイフを一本受け止める。残りは腕や足の鱗が弾いて地面に落ちた。さすがに私の鱗のほうが硬いよな、ステラのせいでちょっと自身無くなりそうだったけど大丈夫そうだ。
「すまないラヴァ」
「気にしないで、索敵を続けてね」
「ああ、みなさん右に二人向かっています! 奥の壁には隠し扉、塞いでください!」
「いやー優秀優秀、やっぱりシーカーくんをパーティに入れようよ」
扉を魔法で塞ぎつつシーカーを褒めるカルラはすでに十人ほど気絶させて捕縛済み、武器もなしにずんずん進んでいるステラは六人抱えて戻ってきた。二人も単独でSランク、荷物持ちすらそこらの冒険者を遥かに凌駕する力を持っている。
――なにより化物だったのは、正面で暴れるレイラ。髪をなびかせて光が反射する鎧が輝き、踊るように敵を制圧しいる。しかも左右のあぶれた敵すら見逃さず一人一人丁寧に……奇襲開始からほんの少ししか時間が経っていないのに、すでに部屋にいたほとんどの敵はレイラの手によって気絶し捕縛された。
「すげぇ、これがSランク……」
「ひゃあー、こりゃギルオジが依頼するわけだよ。闇ギルドなんて一網打尽だね」
「この……混血が……!」
そんな私もシーカー狙いの奴らを倒して三人ほど捕縛、武器は使えないけど人間相手なら素手で十分だった。闇ギルドって言っても荒くれ者の集まりみたいなもんだから、単独だとあんまり強くない。いいとこBランクあたりだと思う。
「よし、この部屋にいた奴らは終わったな。あとはギルバートさんがいる別働隊に任せて私達は親玉を探すぞ」
「では索敵を、入り組んでいますがおそらくさらに地下にいると思うので下を重点的に探ります」
索敵を始めたシーカーの周りの集まり、カルラがサウンズに制圧終了を告げる。
「サウンズくん、こっち終わったから雑魚は任せたよ」
『えっもう!? あっちもう終わったらしいっす、逃げた奴らの捕縛は――』
だいぶ焦っていたようだけど、まあ私も驚いてるよ。せっかくじっくりSランクを見ようをと思ったのにすぐ終わるなんて、もうちょっと闇ギルドも頑張ってくれて良かったんじゃないかな。
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