第32話 闇ギルド捕縛作戦開始

 闇夜に紛れて竜骨地帯までやってきた私達は、闇ギルドのメンバーにバレないようレイラパーティの魔術師カルラの魔法によって姿も気配も消されている。変なやつだけどSランクなだけあって腕は確か、来る途中に出会った魔物にも一切気づかれなかった。


 この魔法で近づかれたら私でも気づかないかもしれない、わかるのはヨナぐらいだろう。


「ここがその洞窟だな。シーカー、お前の出番だ」


「はい、足跡が二つこの洞窟に入っていきました。いま内部情報を読み取ります」


 シーカーが洞窟の入口で地面をトントン叩いて集中する。音の反響を利用した索敵能力は私の耳より精度がいいみたいで、しばらくして取り出した紙に内部の地形を書き出した。


「入り組んではいますが途中で壁になっている道もありますね、罠だと思います。おそらく知らずに入れば出てこれないようになっているかと……」


「お前なんでBランクなんだ?」


「この索敵範囲はAランクでも十分通用するよな、うちに欲しいぐらいだ」


「そんな褒めないでください。俺はこれ以外なんもできないんで……一人じゃゴブリンも倒せないぐらいです」


「索敵役に戦闘は期待しないだろう、確かに一部あぶれた敵を掠め取ることも仕事のうちだがそんなもの敵を逃さなければ良い話だ」


「レイラ、Bランク以下のパーティにそれを求めるのは酷だよ」


 当たり前のように机上の空論を展開するレイラの尺度じゃAランクだって尻込みする。パーティは特化型を集めるんじゃなくてある程度全員がなんでもできるのが推奨されているから、戦闘が一切できないシーカーがBランクなのも妥当といえば妥当。


 Aランクパーティに所属したところでいずれ私のように役に立たないと追い出されるかもしれない。


「とはいえ戦闘ができないとなれば守る必要があるな、ラヴァがやってくれ」


「はいはい、Eランクの竜人はSランクの皆様にお任せしますよ」


「謙遜するな、私の見立てじゃお前はカルラやステラより強いぞ」


「ひどいぜレイラ、仲間より友達贔屓かよ」


「事実だ。反論するなら今度模擬戦でもやってみたらどうだ?」


「私が遠慮する、Sランクと模擬戦なんてごめんだ」



 簡単な交流をすませてシーカーの作った地図を頼りに洞窟を進んだ。レイラが先頭、脇を魔術師のカルラと運び屋のステラが固めて後ろにシーカー、私が最後尾になることで戦えないシーカーを囲んで守る布陣だ。


 途中途中でシーカーが索敵して地図の精度を上げていくことで罠も回避しつつ正しい道を選択して進むことが出来ていたが、四度目の索敵で一度ストップがかかった。


「目があります、監視用の水晶が三つ壁に埋め込まれてるので通ればバレるかもしれません」


「カルラ、誤魔化せるか?」


「お安い御用、シーカーくん位置を教えてくれたまえ」


「あそことあそこ……あと天井に」


「『写せ』」


 カルラが杖を振るとシーカーが指差した場所に水の膜のようなものが作り出された。


「姿隠しじゃなくて風景を映し出す魔法だから、いま水晶にはいつも通りの暗い洞窟しか映ってないよ。いまのうちに抜けよう」


「やっぱ魔法ってすごいな……」


「教えてあげようか? しばらく街の宿にいるから訪ねてくれれば二人っきりで手取り足取り」


「……カルラ」


「すまん、もうレイラのアイアンクローは勘弁してくれ。顔がなくなっちまう」


「いま結構危ない場所にいるんだよな? なんでみんなそんな冗談言えるんだ……」


 シーカーだけはこっちの態度が不思議なようだ。まあ私だって浮かれてるわけじゃないけどね、Sランクパーティがいるから安心感あるだけでここが敵地なのは変わらないよ。



 それからも問題なく進み続けたけど、シーカーの索敵とカルラの魔法のおかげで驚くほどスムーズに目的地が近づいてきた。連絡役のサウンズからも特になにも言われてないから作戦は順調なようだ。


 一応道中戦うこともあるかと覚悟していたけど、気楽な雰囲気に流されたのかシーカーが私の近くまで来て話しかけてきた。


「なあ、気になってたんだがお前はレイラさんとどういう関係なんだ?」


「友達かな、あっちはそう言ってるし」


「Sランクだろ? たまたまギルドにいたから話せるような相手じゃない、友達なんて関係なれないだろ」


「それはいろいろあってね……まあ気にしないで、いまは仕事中だし」


「混血だからって避けてたけど、お前も底が知れねえな……」


「いやいや、私はただの混血の竜人だよ。まあ種族気にしないで話してくれると嬉しいけど」


「ま、まあ今も世話になってるしな。いままで悪かった」


 おやまあ、Sランクと友人だと言うだけでちょっと見直してくれたのか。私だってシロと友達になりたいヨナみたいにギルメンと仲良くしたかったしシーカーがこうして話してくれるだけで進歩した気がするよ。


 と、しみじみ思っていところでレイラ達の足が止まった。目の前に重厚な扉があるということは闇ギルドの拠点に着いたようだ。


「ここからは本格的に戦闘になる。任務内容は全員捕縛、要は死なない程度に痛めつけておけばいいという話だ」


「俺達でぱっぱとやっちまうからラヴァちゃんはシーカーくん守っといてね」


「こういうのは久しぶりだな、大型魔物なんかより楽しそうだ」


 カルラが杖を振って扉の鍵を外すと、レイラが腰に差していた剣を抜いて大きく振りかぶった。




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更新できていない間に☆が100を超えてしまいました。すいませんありがとうございます!

物語も展開していきそうな気配があるので引き続きよろしくお願いします!

(応援コメントなどお待ちしております、めっちゃ嬉しいので)

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