第4話 8月の威風堂々
由紀の心臓の手術は成功だった。だが、手術中に由紀は酸欠状態となり、脳死となった。
病室には、由紀の母親が部員一人一人とあいさつしている。
「さわってあげてください。真紀先輩きっと由紀も喜ぶはず」
金賞代表の表彰状のコピーを渡し、由紀の腕にふれる。
トクン、トクンと心臓がテンポ68をきざんでいる。
「私の卒業式に、エルガー「威風堂々」で泣かせてやるって言っていたのに・・」
「ありがとうございます。真紀さん、由紀は、きっと卒業式には、空から参加しますよ。」
由紀の母の目は、涙でいっぱいになっていた。
「・・由紀のクラリネット奏者の夢、私がおうからね・・天国で応援してね・・」
病院の外は、まだ蒸し暑かった。
悲しみくれつつも、力強く歩く真紀に、強い日差しが背中を押している。
真由の頭の中で、テンポ68でエルガー「威風堂々」が頭の中で繰り返し流れている。
「由紀ちゃん、もっと話したかったよ。」
8月下旬の真っ赤な夕暮れは、夏の終わりを感じさせた。
8月の威風堂々 @taichi_komiyama
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