鬱屈三昧
釣ール
黙らせる
今日も海に住む俺たちの世界を守り続ける。
世界といっても他の生き物からみたら沖でしかないが。
相方スピーシーズ・ギガレインが獲物を探しに海を泳ぎまわる。
「あなたはここを守って。
食糧はしっかり持ってくるから。
あと人間が落とした貴重品も。」
これといった関係ではないが海でさまよい続けた俺たちは意気投合した。
どこでもすり抜けるギガレインの体質なら天敵にも外敵にも食われない。
ギガレインの毒も大した力だ。
自然界で産まれた俺たちみたいな存在は天に二物を与えられる。
それでやっと程々に生きていけるかどうか。
人間は勝手に名称をつけた後に権利を主張する。
名付ける理由なんかに意味はないだろう。
「てめえ!
よくも住処を荒らしたなあ?
海に住んでるからって陸に上がれないと思ったか?
あ?霊長類が?」
俺は怒りが高まれば高まるほど陸での生活も可能なのだ。
もちろん住処を荒らす生き物に合わせて。
悲しいことに大半が人間だ。
攻撃はしないが胸ぐらを掴むことはある。
人間ならチンピラ呼ばわりだが異形である俺ならばたちまちクマに匹敵する危機感をもたらす。
ギガレインの毒で
「この場所に入ってはいけない記憶」を植え付けて痛みを残し、俺たちの記憶だけ綺麗に消すからかえって変な看板を立てられる。
ユーレイとかなんとか。
そしたらカメラ持った奴らが現れてまた繰り返す。
もはや人間しか荒らしてこねえ。
あんなんでも人間の中では学歴やらでマウント取ってるとも思うと怒りと吐き気がする。
ありゃ幸せにはなれないな。
今日は特に住処が荒らされたら形跡はない。
それなのに今までの経験から殺気立つ。
ギガレインが根回しでもしているのだろうか?
俺の脅しもないと人間への反撃として弱いのが奴らの危ないところだ。
結局いつでも追い回せるように用意をしている。
静かそうに見える海で慌ただしく暮らす俺たち。
「今日は平気そうだったみたいだけど。」
「おかえりギガレイン。
何度も俺が追い回した甲斐があったわけだ。」
「あなたが陸まで人間を追い回す姿はいつみても素敵。」
「ギガレイン…。
お前の毒の効能がなけりゃ、俺たち今頃人間に解剖されてる。」
「そうさせないのが私の役目。」
「ああ。
そうだった。
今日もなんか食おうぜ。」
追い回した人間から料理を教わった。
いや、教えさせた。
刺身くらいなら出来る。
うまく付き合っていくしかないと鬱屈した日々で俺たちは過ごしていくことを決めた。
鬱屈三昧 釣ール @pixixy1O
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