第144話 グリエルとギルドマスター
グリエル「カイトのおかげで街に侵入した魔物も消え、壊れた街の結界も修復できたから、冒険者達には一旦休んでもらおうか」
「休憩にゃ?」
グリエル「ああ、最低限の人数だけは残ってもらうが、城外に出て魔物の駆除をしていた者達は一旦休んでくれ。回復したらまた魔物の駆除に挑んでもらう事になるからよく休んでおけ」
スタッド「だが、そろそろAランクの魔物が押し寄せてくる頃だ。今街に残ってる冒険者では対処できるかな…」
グリエル「まぁ、ここからは籠城戦が主になるかな。命が最優先だ、あまり無理せず行こう。カイトが張ってくれた結界が頼りだ。かなり強力な結界のようだが……魔物の攻撃を長く受け続けたら持たないだろうな…」
「大丈夫にゃよ」
グリエル「大丈夫? …とは?」
「俺の魔法障壁はかつて古龍と対決して勝った実績があるにゃ。古龍より攻撃力のある魔物が来ない限り、大丈夫にゃ」
スタッド「古龍……だと?!」
グリエル「古龍と戦ったことがあるのか?」
「あるにゃ。引き分けだったけどにゃ」
スタッド「いやいやいや……さすがに信じられんよ…?」
アリー「でも、カイトならありえるかも? ……なんてね、やっぱりないか!」
「別にどうでも……信じてくれなくて構わんにゃ」
グリエル「…まぁ、ともあれ、ずっと籠城しているわけにもいかないので、なんとかする方法を考えるしかない。普通の魔物なら自然に居なくなる事もあるが、アンデッドは街に寄ってくるからな……」
アリー「待ってればそのうち俺以外にも他の街から応援の冒険者が来て、街の外に居る高ランクのアンデッドを排除してくれるかも?」
スタッド「高ランクのアンデッドに城外に居座られたら、外部からの補給が受けられずジリ貧になるだろ」
グリエル「外部からの応援は、期待はしないほうがいいだろうな……。そもそもアンデッドに対抗できる冒険者は少ないからな。とりあえずギルドマスターに、冒険者ではなく聖魔法が使える神官や聖騎士を派遣してくれるよう帝都に要請するよう進言してみる。きっと嫌がるだろうがな…」
スタッド「仮に高位の神官や聖騎士を派遣してくれるにしても、すぐには来られないだろう。長期戦を覚悟したほうがいいな」
グリエル「となると……現状できる事はあまりない、かな。今街にいる冒険者に聖魔法が使える者はいないし。教会の神官が頼りだが、彼らは少ないし、魔力もそう多くはないから、全てのアンデッド排除するのに一体どれだけ掛かるやら……。それに、ボス級アンデッドが出てきたら街に居る下級神官程度では太刀打ちできないだろうしな…」
まぁとにかく、冒険者達は一旦休ませて、その後また、何かできないか試してみると言う事だった。
少し時間ができたので、俺はこの街の料理屋に行ってみる事にした。この街ならではの美味い料理があるかも知れないからな。そういうのがあったら大量発注して亜空間収納にストックしておくのだ。
……だが、スタンピードの厳戒態勢下であったため、食料は配給制となっており、料理屋は開いていなかった。自炊できない人間も居るはずだが、調理済みの食事が配布されるらしい。一応俺も貰ってみたが、不味い携帯食の詰め合わせみたいな内容だった。つまらん…。
+ + + +
■グリエル
二週間ぶりに家に帰った。スタンピード前の上級冒険者の達のレイドから家に帰れず、ギルドにずっと詰めていたからな。サブマスターである俺が居ないと、ギルドマスターが頼りにならないこのギルトでは大変な事になってしまうからな。
まぁ、独身なので、家に帰っても誰も居ないので、ギルドに住んでるようなもんなんだがな。
久々に家のベッドで寝て、翌朝、再び冒険者ギルドに出勤すると、受付嬢がギルドマスターが来ていると告げた。
ギルドマスターなのだから“来ている”という表現もおかしいのだが、ガルシアは領主の屋敷に居てギルドには滅多に顔を出さないので、職員や冒険者達にもそう言われてしまうのだ。
この街の冒険者ギルドのマスターはガルシア・ボンザレス。この街を収めるボンザレス伯爵家の三男だ。
ガルシアはたまにやってきては好き勝手言いかき回して帰るだけなので、実質、ギルドの運営はサブギルドマスターである俺が代わりに回している状態だ。
職員も冒険者達も俺にギルドマスターになって欲しいと言う。俺だって任命されるのであれば望むところだ。だが……ギルドの上層部はガルシアに、いや、ダンジョンの管理者となっているボンザレス家に忖度して、ガルシアをマスターに任命したのだ。
一週間前、レイドが失敗し、三日前、スタンピードが始まる兆候があると報告を受けた。それを聞いたガルシアは慌てて領主と対応を話し合うと言って家に帰り、そのまま連絡が途絶えた。おそらくダンジョンの
※ダンジョンは攻略済みなので、ダンジョンコアのある制御室に直通の転移装置があり、ダンジョンマスターはそこでダンジョンの設定を変えられる。ダンジョンマスターは現在、領主であるホセ・ボンザレスという事になっているが、代理としてコアルームへの鍵をガルシアが預かっている。(この鍵を持つ者が転移装置の起動とダンジョンの制御権を持つ事になる。)
当然、ガルシアはスタンピードを止めるべく、ダンジョンコアルームに行ったはず。だが……スタンピードが止まる気配は未だない。どうなっているのかガルシアを問い質す必要がある。
俺は早速ギルドマスター執務室へと向かった。
+ + + +
◇ギルドマスター執務室
ガルシア「遅いぞグリエル! 重役出勤か?!」
まだギルドの始業時間前だっつーの。それに、俺はこの二週間、ギルドに詰めっぱなしで寝る間も惜しんで働いていたんだがな?
「……
…マスターは“珍しく”お早いご出勤で」
ガルシア「ふん、このような事態なのだ、当然だろう。呑気に休んでいるとは怠慢だぞサブマス」
(うるせえばーか)
「それで、どうだったんです? ダンジョンの制御は……?」
ガルシア「…ああ、ダメだったよ。一切操作を受け付けん。なんとか無理やり命令を聞かせようとしたのだが、制御室から放り出されて、二度と入れなくなってしまった」
「はぁ? …無理やりって一体何をしたんです?」
パワハラで人間に絶望したサラリーマン人間を辞め異世界で猫の子に転生【賢者猫無双】~天邪鬼な賢者猫、異世界を掻き回す~(オリジナル版) 田中寿郎 @tnktsr
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