第143話 光刃って何?

グリエル「しかし……レイスが来たってことは、真相のアンデッド系の魔物が既に街に到達してきてるって事だよな。思ったより早いな……」


そこに城壁の(結界の)状態を確認しに行っていた兵士長オクロンが戻ってきた。


グリエル「おお、オクロン。防壁の状況はどうだ?」


オクロン「大丈夫だ。前は魔物の攻撃を受けるたびに壁が揺らいで不安な感じだったのが、カイト君だったか? 彼が張り直してくれた結界は強固なようで、まったく揺るがなくなった。おかげで危険度の高い魔物が押し寄せているのに安心感がある、素晴らしい! あとはどれくらい持つかだが…カイト君、あの結界はどれくらい維持できる?」


「いつまででも。俺が街に居る限りは、にゃ」


グリエル「……魔力が尽きる事はない、のか?」


「ないにゃ。俺の魔力で維持されてるわけじゃないからにゃ」


アニー「どういう事???」


「周囲の魔力を集めて結界に補充してるにゃ。今は周囲に魔物がたくさんいて魔力が多いから結界も強くなってるにゃ」


グリエル「ちょ……そんな事…可能なのか?」


ダイモン「…【賢者】ならできるかも……?」


アニー「…さすが賢者猫…! って事で納得すればいいのかしら……」


グリエル「賢者猫……そのような存在が居るとは、初めて聞いたな…」


オクロン「何はともあれ、結界が恒久的に維持できるなら素晴らしい事だ。グリエル、後で領主に報告して報奨金を貰ってやれよ」


「そんなのはいらないにゃ、ただの応急処置だからにゃ。俺が居れば補充も可能にゃけど、居なくなったら徐々に薄くなってそのうち消えるにゃ。その前に街の結界を修復するにゃ」


グリエル「そ、そうなのか…。だが、一時的にしても街を救ったのは確かだ。その貢献には報酬があるべきだろう。それでオクロン、魔物は? かなり来ているのか?」


オクロン「ああ、深層の高ランクの魔物が到達したので、低ランクの魔物は皆逃げてしまった。まだレイス以外のアンデッド系の高ランクの魔物は見えないが。今は高ランクの魔物が城壁を攻撃している状況だ。城壁の上から兵士達も攻撃を続けているが、高ランクの魔物は防御力が高くて効果がない。領主の騎士もやってきて何度か攻撃してみていたんだが、傷もつかず、過ごすご帰って行ったよ…」


グリエル「ダンジョンから出た全ての魔物が街に向かっているわけではないはずだ、周辺に魔物が増える事になる。当分の間、街から出る時は護衛を強化する必要があるな…」


オクロン「その前に、街が生き残れれば、だがな。城壁に取り付いている魔物の中に、徐々にアンデッドが増え始めている。厄介だ…」


グリエル「レイスはアンデッド軍団の斥候か……」


オクロン「他の魔獣はダンジョンから四散していくが、アンデッド系の魔物は基本、全部街に向かって来ると言われているからな…」


スタッド「アンデッドは元人間だったものが死んで魔物化したと言われているからな。人間の街が恋しいのかもしれんな…」


オクロン「カイト君の結界がいかに強くとも、深層からS級のアンデッドが出てきたら防ぎきれるか…」


「そいつは強いにゃ?」


グリエル「ああ…ゾンビやグールなど下級のアンデッドならいいんだけどな。こいつらは物理攻撃も効くし、火魔法に弱いという弱点もある。だが、スケルトンが出てくる当たりから厄介になる。骨は異常に固くて物理攻撃で破壊するのが難しいし、初級程度の攻撃魔法ではまったく効果がない。力も強く、動きも速く、そして数が多い。聖魔法なら倒せるが、数が多いとすぐ魔力切れになってしまうからな」


アニー「中級魔法以上の攻撃魔法なら効果があるけど、それこそ魔力消費が多くて連発できないしね…それと、アンデッドは、討伐ではなく聖魔法で浄化して天に送ってやるのが正しい処理だと言われているわ。まぁ、ターンアンデッドを使える人間が希少なんだけどね」


グリエル「教会の神官を連れてダンジョンに潜るわけにも行かないからな」


「そうなんにゃ…。浄化せずに倒してしまうとどうなるにゃ?」


グリエル「魂は闇の魔力に囚われたままだから、また時間が経つとアンデッドとして蘇ってくると言われている。宿る肉体が滅んでしまっているから実態のないレイスになるようだな」


「光球ぶつけて倒した場合はどうなんにゃろね? やっぱりターンアンデッド使ったほうがいいのかにゃ?」


アニー「光球って、明かりとして浮かべるやつ? 生活魔法の? 使える人間も多いあの光球…?」


「そうにゃ。ただの光だから、人間や普通の魔物にぶつけても何の効果もないが、アンデッドにぶつけると痛がるにゃよ。強い光球をぶつければアンデッドも倒せるにゃ」


アニー「ほんとに? それが本当なら大発見じゃないの?! 広く発表する価値がある情報では?」


グリエル「うむ、ギルド本部に伝えておこう。カイト、構わないか?」


「構わんにゃよ。スケルトンと戦っていてたまたま気づいただけにゃ」


アニー「普通、スケルトンと戦ってる時にそんな事試す余裕はないもんだけどね…スケルトンは最低でもランクC、上級種はそれ以上になるのに」


「スケルトンの群れが居て、どれくらいの数が居るのか確認しようと強めの照明をそいつ等の頭上に浮かべたにゃ。多分五百くらい居たにゃ」


スタッド「五百って……死ぬるな……」


「そしたら強い光を嫌がる素振りを見せたので、試しにそのまま光球をスケルトンの中に突っ込ませてみたらダメージを受けたにゃ。光に弱いって気づいてからは簡単だったにゃ。光球を光刃に変えて薙ぎ払ったにゃ」


アニー「ちょっと待って、光刃って何? そんな魔法があるの?」


「風刃が作れるなら光刃も作れるにゃろ? 空球エアボールを風刃に変えるとの同じにゃ。まぁ光だから物理的な破壊力はないけどにゃ」


グリエル「ちょっと待て、空球ってなんだ?」


「そうか、空球は俺が勝手に名付けたんだったか…。風属性の魔法を球状にしたものにゃ。火属性の魔法を球状にしてぶつけるのが火球ファイアーボールにゃろ? なら他の属性の魔法でもできるはずにゃ。ほれ」


一同「?????」


「空気を圧縮しただけの球だから見えないにゃよ」


グリエル「本当にあるのか……?」


アニー「あるわ、魔力の感度が高い人間なら見えると思う」


「体験すれば分かるにゃ。ほれ」


俺はグリエルに空球をぶつけてやる。


グリエル「おわっ! 急に爆風が……」


圧縮空気の球はグリエルの体に当たって一気に膨張拡散し突風が起き、その圧力でグリエルが1~2歩下がった。


「おお、体幹強いにゃ。騎士でももう少しよろめくんだけどにゃ」


グリエル「まぁ、これでも元Aランクの冒険者だからな」


「でもかなり強い空球でも、空気だからにゃ。もっと鋭く絞らないと攻撃には使えないにゃ。相手を傷つけずに一瞬下がらせるとかはには使えるにゃ」


アニー「ちょっと……新しい情報が多くて、整理がつかないんだけど……」


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