第142話 ターンアンデッドにゃ
街の男「たったったっ大変だ! 魔物が! 街の中に入り込んだ!!」
グリエル「なんだと?! 城壁を破られたのか?」
男「わ、分からねぇ、けど街の中に居るってことはそうなんだろ! 魔物を退治するのは冒険者の仕事だろ、なんとかしてくれ!」
それを聞いてすぐにギルドを飛び出すグリエルほか冒険者達。すると、兵士長が走ってきた。
グリエル「オクロン! 魔物に城壁を破られたのか?!」
グリエル「レイス?! だが城壁と街の上空にはレイスも入れない結界が張ってあったはずだろう?」
オクロン「何度も魔物の攻撃を受けているうちに(結界が)壊れてしまったようだ。ただ城壁は無事なので、魔物が入ってくる事はないだろうが、空を飛ぶ魔物とレイスは別だ。兵士達が対応に当たっているが、冒険者達も街の中の魔物退治に協力してくれ!」
グリエル「レイス以外にも飛行系の魔物に入りこまれているのか?」
オクロン「いや、今のところはレイスだけだが、時間の問題だろう」
グリエル「そうか、だがレイスとなると厄介だな…」
スタッド「ああ、レイスには物理攻撃は効かない。物理攻撃しかない冒険者では対処は難しいぞ」
グリエル「レイスが相手なら教会から聖魔法が使える神官を連れてくればいいんじゃないか?」
オクロン「もうやってる! だが、数が多すぎて、神官も魔力がもう切れてしまったんだ」
オクロン「冒険者の中で聖属性の魔法が使えるものは居ないか? 居たら協力して欲しい!」
グリエル「生憎、聖魔法が使える人間は冒険者にはほとんど居ない…」
アリー「まぁ、聖魔法が使える者はほとんど教会関係に就職してしまうからね…」
オクロン「兵士の中にも聖属性の魔法が使える人間は居ないんだ…」
アリー「レイス相手なら、聖魔法でなくとも、他の魔法でも多少は効くわよ、火魔法とか。効果的とまでは言えないけど…」
オクロン「できたら町中で火を使うのは避けたいんだが、やむを得ないか…協力してくれ!」
スタッド「水魔法を使える奴とセットで行けば火事は防げるかもしれんぞ」
オクロン「こっちにも来たぞ!!」
オクロンの視線の先を見ると、三体のレイスがふわふわと宙を漂いながらこちらに向かってくる。兵士が槍で突いたりしているがレイスの半透明の身体を素通りするだけで何のダメージもない。
そのうちレイスが手を伸ばし兵士の首筋に触れると、兵士はヘナヘナと尻もちをついてしまった。
オクロン「くそ! ドレインタッチだ!」
(レイスに触れられると人間は魔力や生命力を吸い取られてしまうのである。)
グリエル「来たぞ!」
レイスが一体こちらに向かってくる。その前に立ちはだかるように俺は前に出た。
スタッド「おい? カイト?!」
「ターンアンデッドにゃ」
次の瞬間、レイスは動きをピタリと止め、そのまま煙となって天に登って行った。
アリー「ちょっと! あなた聖属性の魔法も使えるの?!」
「聖属性? は知らんけど。光属性とは違うにゃ?」
アリー「それであってるわよ、聖属性は教会用語だったわね」
さらに二体のレイスが俺が放った光を浴びて昇天していった。
ダイモン「さっき、コボルトを倒した時は風属性を使っていたよな? 光と風二属性持ちか?」
アリー「それだけじゃない、オーガの時には属性の良く分からない魔法も使ってたわ…あれは無属性?」
ダイモン「三属性?! まるで賢者だな」
「俺は全属性の魔法が使えるにゃ。
ダイモン「信じられん、そんな存在が居るなんて…確か帝都にいる賢者アダラールも四属性だって聞いたのに…」
「あれ? メイヴィスも全属性使えるって言ってたけどにゃ」
ダイモン「お前、賢者様と知り合いなのか?」
「まぁにゃ」
アリー「なるほど道理で……」
オクロン「話は後だ! 君! まだ魔力は持つか? なら他のレイスもなんとかしてくれ! 兵士達ではやられる一方でどうにもならんのだ」
「ほい。もう解決したにゃよ。街全体を光魔法で浄化したにゃ。ついでに結界を張り直しておいたから、魔物はもう入って来れないにゃよ」
グリエル「街…全体だと?」
アリー「ちょっと、そんな広範囲の範囲魔法、あり得ないでしょう……」
オクロン「……だが、町中のレイスは確かに居なくなっているようだ……」
ダイモン「まるで本物の【賢者】じゃないか……」
「だから
+ + + +
◇冒険者ギルド会議室
グリエル「助かったよ、賢者猫殿。賢者猫殿が居てくれるなら、街は持ちこたえられそうだな。よかったなサル?」
サル「…。本当に街全体を聖魔法で浄化して、さらに結界を張ったのかよ? 一人の人間が……いや猫か、そんな事できるとか、信じられねぇんだけど……」
アリー「実際に街の中からレイスは居なくなってるし、結界も確認されたわ。以前の結界よりはるかに強固で、特に何もしなくても魔物の攻撃に耐えられそうだって」
グリエル「カイト殿…」
「カイトでいいにゃ」
グリエル「カイト。魔力はまだ大丈夫なのか?」
「全然問題ないにゃ。なんにゃらダンジョンに行って魔物を全部駆除してきてやってもいいにゃよ? そしたら強制招集も終わりで帰っていいんだよにゃ?」
スタッド「さすがにダンジョンの魔物を全部狩るのは無理だろ…」
「やってみないと分からんけどにゃ。ダンジョンは一度しか入ったことないにゃ。ダンジョンてのは場所によって随分違うんにゃろ?」
スタッド「ああ。このダンジョンは、上層・中層はごく普通のダンジョンなんだが、深層になると、アンデッド系が出るんだよ。それも深い層にはSランク級の怪物が出る。駆除に行った先輩冒険者もそれにやられたらしい…」
「そのSランクのアンデッドには光…聖属性はきかなかったにゃ?」
グリエル「そもそも、聖属性持ちは冒険者にはほとんど居ないんだよ。みんな教会に取られてしまうからな。一応、先だってのレイドでは聖属性持ちの旅の冒険者がたまたま街に居てな、頼み込んで同行してもらったんだが、一緒に死んでしまった…」
アリー「そもそも聖属性ってのは発動に大量の魔力が必要だから何発も連発できるもんじゃないからね」
「そうにゃ? 人間は大変なんにゃね」
アリー「人間は…? あなたは違うの?」
「俺は人間じゃないからにゃ」
アリー「聖…光魔法を連発しても問題ないほど魔力を持っているってコトね?」
「魔力は多いかもしれんけどにゃ。そうじゃなくて、聖魔法は知らんけど、光魔法は一番魔力が少なくて済む魔法にゃ。まぁ使うのにちょっとコツが居るけどにゃ」
アリー「確かに、明かりを灯す魔法だったら生活魔法で、一般人でも使える人は多いわね…それと同じってこと?」
「にゃ」
アリー「でも教会の人間はそうは言ってないわよ? 治癒魔法には大量の魔力が必要だって」
「治癒魔法はそうかもしれんにゃ。でもアンデッド倒すなら明かりを灯す程度でも行けるはずにゃよ? 治癒魔法使ってたら大変かもしれんにゃ…」
アリー「ちょっと、それ、常識を覆す大発見なんじゃ…?」
グリエル「頼もしい限りだな。カイトが居てくれるなら、少し作戦を変更しなければならないか?」
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