第74話 水の都イスティ
クエスト達成の報告と一緒に事件の詳細について聞いてみた。
どうやらイスティにおいて現在行方不明の事件が相次いでいるそうだ。
現場が遠洋ということで海の魔物によるものと考えられているが、今回調査に出ていたSランク冒険者達まで行方不明になってしまったらしい。
流石に最高峰、Sランク冒険者が4人もということでここまで情報が届いたということみたいだな。
しかし、こんな事をできる魔物なんて存在するのか?
そう考えているとふと一つの可能性がよぎった。
「ファフニール、これは……」
「ああ、我の心臓によるものかもしれんな」
ファフニールもその可能性を考えていたようだ。
もし魔物があの心臓を取り込んでいたなら、それが可能であるかもしれないと。
「ロビン、危険よ?」
レイが次に俺が言うだろう言葉を察して心配そうな顔をする。
「でも行かないとね」
「そうじゃ、あれは我らが取り戻さねばならぬ」
そう、あの心臓が原因ならば俺達がやらないとだめだ。
一刻も早くあれをファフニールに戻さないといけない。
「はぁ……わかったわよ」
半ば諦めた顔で言うレイ。
申し訳なく思うが俺はギルドにイスティに行くと報告し、すぐさまカルタナを発った。
♢
「ここがイスティか」
馬車に揺られること数日、水の都といわれる都市イスティにたどり着いた。
「雨は嫌じゃのう」
イスティ近くになると雨が降り始め、それはここに着いてなお振り続けている。
空は気が重くなるほどの黒い雲が覆い、太陽を隠して薄暗い。
流石に火のドラゴン、雨は苦手そうでめちゃくちゃ嫌な顔をしている。
「止む気配はないわね」
遠くの空まで見てもそれは続き、どうやらまだまだ雨は振り続きそうだ。
傘をさし、都市を歩く。
白い石畳で綺麗に道が舗装されている。
右に並ぶ建物はオレンジ色のものが多く、高さや形は統一されている印象を受ける。
左には川が流れ、雨による影響か流れが早くなっており、氾濫しないか不安になる。
そしてこれも雨の影響だろうか外にいる人はすくなく、すれ違う人も心なしか暗い表情をしている様に感じる。
「店が閉まっておるのぅ……」
歩いていると休業中の店が目立つ。
ファフニールやレイが残念そうな表情をしているが、俺はレイがスッと隠した本を見逃さない。
海産物が美味しいと評判だから食べたかったのだろうな。
心臓を無事取り戻せたら美味しいものをいっぱい食べに行こう。
「とりあえずギルドへ行こうか」
「そうね」
ギルドにて詳しい情報を貰おう。
♢
「あのロビン様にはるばる来ていただけるとは、ありがとうございます」
イスティにも俺の名前は届いている様だ、ギルドの受付に行くやいなやそんな事を言われた。
「すみませんが今回の行方不明事件について教えていただきたいのですが」
「はいもちろん……と言ってもわかっていることの方が少ないのですが――」
そう言ってポツポツと事の始まりから教えてくれた。
始まりは遠洋に出ていた一隻の船が突如消えた事かららしい。
それから同様の事件が相次ぎ、調査クエストを出すも判明しないどころか冒険者まで行方不明になる
事さえある。
そこでSランク冒険者4人に依頼して調査に乗り出すも、4人共そのまま戻ってこないらしい。
そこから都市に雨が降り始め、海は荒れて漁にも出れない日々が続いているという。
だから店も閉まっている所が多いのか。
と、殆どカルタナで得た情報と街を歩いて見た状況しか得られなかった。
一つ言えるのは事件の真相は全くわかっておらずかなり危険だという事。
犯人は魔物か自然現象か、はたまた人か……俺はドラゴンハートを取り込んだ何者かの仕業と考えるがいろいろな想定をしないといけないな。
調査をしてくれるならと明日船をギルドから出してくれる事になった。
空から行ってもいいのだけどレイ達も行くとの事だし場所の見当もつかないのでこれはありがたい。
よし、気合を入れていこう。
異世界転生先の職業はチート盗賊!?~レベルMAXのスキル《盗む》がとんでもない!~ 茶部義晴 @tyabu
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