やぎよりもねこに与へよ古暦

【読み】

やぎよりもねこにあたへよふるごよみ


【季語】

古暦〈暮〉


【語釈】

古暦――(「ふるこよみ」とも)暮れも近づき、使い古したその年の暦。また、役に立たなくなった旧年の暦。傷口にこれを当てればけががよくなるという俗説があった。

[精選版 日本国語大辞典]


【大意】

ヤギよりもネコにくれてやれ。年が暮れて役に立たなくなった、古い暦(=カレンダー)は。


【付記】

わたしは今月に入って当サイトで読んださる小説(エッセイ・ノンフィクション)にいたく感銘を受けた。それでレビューコメントを書いたのだが、作者様から以外の反応は全然なかった。その悔しさをバネにしてよんだのが標題の句である。


https://kakuyomu.jp/works/16818023214042006223 ←夷也荊様の『君が僕の予定を狂わせる。』の表紙のページへのリンク


この句にはいまひとつ本文(ほんもん)がある。青切様の短編集『十二色の物語』中の「結婚の報告」という小説がそれである。


https://kakuyomu.jp/works/16818093074252119011 ←青切様の『十二色の物語』の表紙のページへのリンク


わたし自身はこの句を夷也荊氏の作品へのオマージュと位置づけている。だが、典拠が複数あったらその意味合いが薄れてしまうと懸念する向きもありそうなものである。わたしの答えは、ヤギが紙を喰うらしいことは某唱歌の存在も手伝ってひろく知られており、オマージュとしての意味が薄れることはあるまいとのものである。


しからば、青切氏の作品をダシにしてけしからんとの声が聞こえて来そうである。ダシにはしたかもしれないが貶めてはいないつもりである。わたしは氏の短編小説やエッセイをおそらくほとんど読んでいる。その事実を、わたしが氏の作品をよほど嫌っているからにちがいないと考えるひとは、筋金入りの天の邪鬼であろう。


なお、古暦にまつわる俗説は当エピソード執筆時に知り、したがってそれを念頭にこの句をひねったわけではない。


【例句】

見開や古暦の大全代々よよのはる 西鶴

古暦ほしき人には参らせん 嵐雪らんせつ

古暦吹かるるや三輪の町はづれ 蕪村

ようて寝た日のかずかずや古暦 几董きとう

人もをし人もうらめし古暦 内藤鳴雪

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