第5話
「どこへ逃げたんだ」
と、私は探し回っていたが、すぐに図書館へと向かった。
図書館にはファントムが秘密の通路へとつながる階段を見つけ降りようとしていたが、私は急いでファントムにとびかかり、捕まえようとした。
が、ファントムは私の猛攻をひらりとかわし、「ねえリチャード。
君も気になるだろう?
みんなが血眼になって探しているブルーベル・ルビーを」
と言って、私を地面にたたきつけ、ファントムはさっき本で見たヒントを頼りに秘密の通路を探した。
そう、その本とは、先ほど私が侯爵に、いや、ファントムに見せた『お屋敷の謎』のことだ。この時私がファントムに見せたこのページには、このようなことが書かれていた。
『ここ、ナヴァリスでは、ある侯爵が他国との貿易に成功し、莫大な資金を手に入れた。
そのお金を使って侯爵はナヴァリスに立派なお屋敷を立てた。
お屋敷には四つの塔を作り、それぞれ東の塔、西の塔、南の塔、北の塔という名前を付けた。
ただ、東の塔や南の塔、北の塔は中に入ることができたが、西の塔は入口に大きな岩を置き、誰も入れないように侯爵はした。
こうしたことで侯爵は西の塔の地下室に世界で一つしかないといわれているブルーベル・ルビーをかくした。
が、ここで一つの疑問が生まれた。それはどうやって西の塔の地下室へ向かうかだ。やがて侯爵は病気で亡くなり、お屋敷はしばらくの間誰も住むことがなくなったため、ブルーベル・ルビーを求めてたくさんの人が西の塔の地下室の中へ入ろうと頑張ったが、誰も中に入ることができなかった。
そんな時私はこの謎を解くことができた。
まずお屋敷に建てられている塔のことについて知ってもらおう。
東の塔や、西の塔、南の塔は全て、お屋敷から離れた場所に建てられていたが、北の塔だけは違った。
北の塔だけはお屋敷のすぐ隣にたてられていた。
私はそれを知った。
なので、まずはお屋敷の中から北の塔へと続く秘密の通路があるのではないかと探してみた。
数時間探していると、私はついに、北の塔へとつながる秘密の通路を見つけた。
それは、このお屋敷に侯爵が自ら作った図書館に隠れていた。
私は図書館から秘密の通路へと行き、西の塔へと向かった。
が、図書館から地下へと向かう階段は無限に続き、いくら階段を降りても地下通路へはつながらなかった。
なので私は一度図書館へと戻り、階段を一つずつ調べた。
すると私はついに西の塔へとつながる秘密の通路を見つけた。
そのまま私は西の塔へと向かい、ブルーベル
・ルビーが隠されていることをしっかりと確認した。
これを手にすれば私は大金持ちになれるが、私はブルーベル・ルビーを手にすることはしなかった。
私の当初の目的は、この謎を解くことだった。なので、こんなちっぽけな宝石のために、様々な人に狙われることは私は嫌だったため、私はブルーベル・ルビーを手にすることをやめ、そのまま何事もなかったかのようにお屋敷から立ち去った。
これは私が今まで生きていた中で一番難しかった問題だが、無事解くことができた。
私と同じようにこの問題を解こうとする人がほかにいるとしたら、まずこの本を手に取ってみることをおすすめする。
そしてこの問題を解こうとしている人たちには私からヒントを与えよう。
『★32↓ ★ 0-5-6-4』
このヒントを頼りに問題を解いてみてくれ。
幸運を祈る
ナル・シュリッシュ』
これを読み、私はあることに気が付いた。
それは私が最初に見つけた謎の石像のことだ。その石像には0-5-6-4書かれてあったからだ。
「やはりこの数字はこの謎に関係していたのか」
そう思い私はファントムの後を追って素早く階段を下りたが、突然ファントムが止まり、私は危うくファントムにぶつかりそうになった。
私は黙っているファントムに向かって
「どうしたんだ?ファントム」
と聞いてみた。
するとファントムは
「その本のヒントを見てくれ。
★32↓と書いてあるだろう。
ちょうどここは一番上の段から32段目だ。
それと、足元を見てくれ。
ここには★マークが彫られている。
そしてその横には、ダイヤルがある。
しかも四つだ。
これは何かに関係がありそうじゃないかい?」
と言って、私に問いかけた。
それを聞いて私はとっさに
「ま、まさか……」と、言ってしまった。
それを聞いてファントムは、元気そうに笑ってダイヤルを回し始めた。
石でできたダイヤルなので、回すのに苦労していたが、やっとのことでファントムは四つのダイヤルを0-5-6-4に合わせた。
すると、さっきまで壁だった部分が
「ガラガラガラ」
という、大きな音を立てて秘密の通路へとつながる道が現れた。
「これが、秘密の通路か……」
と、私は少し驚いたが、ファントムの後を追って秘密の通路を駆け抜けたその先には、ファントムが手に持っているランタンの光で青く光り輝くブルーベル・ルビーがあった。
私はブルーベル・ルビーのあまりの美しさにしばしの間見とれてしまったが、すぐにファントムのほうを向いて
「ブルーベル・ルビーは見つかった。
さあどうするファントムよ。
このままブルーベル・ルビーを持って逃げるか?」
と聞いた。
するとファントムはしばらくの間考えてから「いや、それはしない。
この宝石は悪い使い方をすれば世界戦争を招きかねない。
だから僕は、この宝石には一切かかわらないことにするんだ。
ただ、一度だけ拝みたかっただけだよ」
と言って、私のほうを向き、
「あとのことは任せたよ、リチャード。
この宝石は、君の気分次第では世界に大革命を起こすことだってできるぐらい貴重なものだ」
と言って、ブルーベル・ルビーを私の手に握らせた。
私は宝石を手に握りしめて、しばらく考えたが、地面に落として、踏みつぶし、粉々に砕いた。
その様子を見てファントムは
「えっ!リチャード。
何をしているんだい⁉」
と、とても驚いていた。
「この宝石が発見されたことを知ったらきっと、この宝石を手に入れるために様々な国々で戦争が起こる。
そんなことが起こるぐらいなら、いっそ粉々に砕いたほうがましだろう?」
と言って、私はファントムに手を差し出した。
ファントムは、驚いていた顔をにっこりと笑顔に変えて、私の差し出した手を握りしめて、熱い握手をした。
その後、私は時々ファントムと敵でありながら、友達として、よく合うようになった。
そしてファントムに、
「なぜあの宝石はそこまでの力があったんだい?」
と聞いてみた。
やはりただの宝石であればそれをめぐって戦争などはまず起きないので、あとから不思議に思い私はファントムに聞いた。
それを聞いてファントムは、
「ああ、あの宝石のことか。
あの宝石はね、もともとは20マイル(作者が考えたお金で、1マイル1000円ぐらい)ぐらいで買える超安物の宝石だったんだけど、その宝石を身に着けていたセラッシュ婦人が、まだ戦争が激しかったころ、最前列で戦い続けたグラインという男に恋をして、やがて結婚したんだが、そのグラインがこの戦争を終わらせるための最後の戦争に行くときに、その宝石をセラッシュ夫人はグラインに渡したんだ。
そして、グラインのおかげで戦争は終わり、平和な時が訪れようとしていたが、ただ、このグラインという男は戦いの途中、仲間をかばって死んでしまい、この宝石だけが残ったんだ。
やがてグラインは英雄と呼ばれるようになり、グラインが身に着けていたこの宝石を、
『英雄の宝石』と呼ぶようになり、彼の象徴として、この宝石は受け継がれるようになったんだ。
まあおかげでまた戦争が起こりかけたんだけどね」
と言って、ベンチを立った。
「さあ、今日はこのくらいにしよう。
リチャード、また君と戦うときは楽しみにしているよ。
それではまた」
そういってファントムはベンチから帽子とステッキを取り、私に言った。
私もベンチから立ち上がり、ファントムに向かって「ああ。また会おうファントム。
その時は全力で君のことを捕まえに行くよ」と言い、
「それでは」
と、握手をして、お互いの進む道へと歩き始めた。
怪盗ファントムⅢ終わり
怪盗ファントムⅢ ~探偵と怪盗の戦い~ ネコを愛する中学生(略してネコ愛) @nekonitukaesigeboku
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