【平和とは、次の戦争のための準備期間である】
……なんて言葉がありますが、二人がどれだけ戦乱の芽を摘んでも、時間が経ち何かのきっかけがあれば再び戦争が起こってしまっていたわけですね。
ところが、魔王という人類共通の敵を得たこと、加えてゾーニャさんの献身によって、ラスですら予想もしていなかった人類の大同盟が実現。
これが、後の多種族共栄の世へとつながっていく……。
それでも、作中冒頭で航空艦隊や核砲弾の話が出てきているところを見ると、現代でも人々は争いを手放せてはいないのだなぁと思ったり……💦
こうした武装は戦争への抑止力としても働くため、”平和”のために必要ではありますが……。
ラスがここまでやったのに、結局人々は一つになり切れなかったんだなぁと考えると、ちょっぴり切なくなったりしちゃいますね(´;ω;`)
作者からの返信
物語として横道にそれるので、そのへんあまり説明してなかったんですが。
この世界の安全保障体制は大同盟という自動参戦条項のある軍事同盟に全世界が加盟しているという、地球人から見ると極めて異常な状態になってます。
そのため、もしどこかの国がお痛をやらかして戦端を開こうものなら、全自動で文字通りの全世界が参戦する全世界大戦になるということです。
そのため、特定の国が抜きん出た国力をもって大同盟から離脱して、独自路線で突っ走ったりするのが、もっとも恐れられました。
このため、各国は同盟も組んでいながらも、特定の国家が強くなりすぎないように、同盟内で派閥の離合集散と軍拡競争をするという、家庭内冷戦とも言うべき状態が最終戦争以降ずっと続いています。
おかげで大きな戦争は一度も起きていないのですが、錬金術を応用した高純度の放射性同位体の量産による、核兵器の極めて安価な製造が可能となり、同じく放射能の安定化・無害化技術が発達しました。
もし何かあれば一瞬で全世界が5000回くらい吹き飛ぶほどの、核兵器保有量となっています。
大国の空軍は常時、成層圏へ核兵器を搭載した戦略航空艦隊を空中待機させている有様です。
人々の頭上を常に世界を何度も滅ぼせる核砲弾を搭載した艦が飛んでいるのです。
それらの主砲から発射される核砲弾は空気抵抗をほとんど受けない成層圏から、成層圏外を経由して仮想敵国のどこへでも、砲撃可能な超射程を実現し、弾道ミサイルを一部代替することになりました。
これによって、弾道ミサイルを使うよりも、コスパ良く核武装が充実させられると考えられていましたが、実際には核武装艦を護衛するために、一個艦隊を常に空中待機させねばならず、思ったような予算削減効果はえられていません。
そのため近年では弾道ミサイルの経済的利点が見直され、核運搬手段が潜水艦によるSLBM化が進んでいますが、例によって世界各国で空軍と海軍による予算の取り合いが熾烈に行われています。
そんな物騒すぎる世界になってしまったことで。
皮肉なことに、それゆえに戦争が実行不可能な世界となっています。
かつて本当に世界が滅びかけた歴史があるだけに、世界滅亡、が現実味のある世界なんですね。
そのため、滅びの運命を恐れるあまり、それを防ぐための軍拡競争していったら、いつのまにか世界を五千回滅ぼせるようになってしまってて。
気づけば、もう絶対にお互いに戦争なんかできない世界になってた、というわけです。
そんなわけで、今日も世界は平和です。
(ただし、天気が良いときに頭上を望遠鏡で見上げれば、いつでも高度二万メートルに戦略艦隊が飛んでるのが見える)
ラスコーリンさんは来世に一縷の望みをかけて、ゾーフィアさんの手にかかったのかな。
生まれ変わったら、ゾーフィアさんを捜し出して、会いに行く。
会いたいという強い想いが、ロジオンさんとハレヤさんとなり、出会えたんだと思いたいです。
作者からの返信
以前にハレヤの手紙の中でも同じシーンが描かれていますが、ラスが最期に語った一連のくだり。
「僕の人生は間違いと後悔しかなかった~~~」
の部分って実は手紙には書かれてないんですね。
なので映画で描かれている。「僕の人生は間違いと後悔しかなかった」のくだりは
本当は彼がこのとき飲み込んだまま、口にしなかった言葉だったんです。
つまり、彼は来世があるとは、このとき考えていませんでした。
だけど、映画の中ではゾーフィアへの思いの丈を、一切の遠慮なく叫んでいるんですね。
なぜなら、この映画は全世界を巻き込んだラブレターでもあるからです。
大同盟の果てに見えた平和な世界、その世界で人々に愛されるゾーニャを見て自身の役目が終わったことを悟ったラスコーリン。
でも、彼の役目はまだ終わらず。罪悪感に囚われたままの彼女を助ける必要がある、と…。
977年、彼女が待ち続けた日々を数字にされると一層長く感じますね…その間も罪の炎にずっと焼かれていたハレヤさん。
本当に、間に合ってよかった!
作者からの返信
彼は自分の意思で呪縛を解除することができないので、大同盟が実現した今となっては、彼の悲願=全種族の共存を叶えるためにもっとも合理的な選択が、ゾーフィアに討伐してもらうことになってしまったわけですね。
ラスもゾーフィアも同じ願いを抱きながらも、違う手段でそこへ近づいていこうとしました。
でも互いの行動が互いの思いも寄らない方向へ作用して、結果として二人の願いがかなったわけですね。
ただし、ゾーフィアにはこれまで自分のしてきた宿業の全てが自分へ跳ね返ってきてしまいました。
三千年にわたって世界中の人々へ自分のしてきたこと、愛する者を失わせるということを、最後は自分自身に対してやるしかありませんでした。
こうやってラス目線で見ることができて、ラスのことがわかりました。
彼も、苦悩していたんですね。
世界を平和に。
ゾーニャを幸せに。
願うことは、それだけだったのに……。
作者からの返信
そうですね。
彼が置かれた状況は、誰に相談することもできない孤独なものでした。
自分がやっていることが、倫理的に赦されないことだと分かってはいる。
けど世界を変える力を持つ自分が、このままに何もせずにいることは逆に、倫理的に赦されるのか?
実行したとして上手くいくのかどうかも、世界の誰もやったことがないことだから、それが正解か間違いかも前例がないからわからない。
失敗すれば人類史上の最悪人。成功してもおそらくそう呼ばれる。
それを全て一人で背負わねばなりませんでした。
コメントありがとうございます。
>もし、二度目の人生があったとしても、もう一度、ゾーニャに会いたい。
>ゾーニャが世界のどこに居たって、必ず探し出して、会いに行く。
>会って、その時はきっと──だから、お願いだ
ここの部分。
実話なのか、それともハレヤへ向けたメッセージ(今のロジオンの気持ち)なのか、どちらなのだろうと想像してしまいました。ハレヤが映画を見ることまで見越して、もしかしたら本人だけにわかるような形で入れておいたのかもしれない……と。
ハレヤはこの映画を見て、今何を考えているのだろう。
彼女の罪の炎は消えるのだろうか。
作者からの返信
そこに目がいくとは!
はい。
ハレヤの手紙にはこの台詞は書いてませんでしたし、ロジオンが見た夢でもここは言ってませんでした。
そして、この台詞の直前のモノローグは
>彼女を勇気づけるために、こう言いたかったんだ。
と、あるように、彼が『言いたいこと』だったわけですね。
つまり、この台詞は世界を席巻した映画を使った、彼からの2度目のプロポーズです。
『ありのままのあなたを愛する』という。
ハレヤが見てくれることを信じて、彼はこの台詞を脚本にいれました。
鋭いコメントありがとうございます。
ルルー〇ュと重なって見えた。これがゼロレクイエムってやつか。蘇生できるのであれば、最悪ではないけど……。
作者からの返信
たった一つの冴えたやり方、ってやつですね。
理想世界を実現するという願いを叶えるために、あらゆるものを犠牲にしてきた彼ですが、それは自分の身とて例外ではなかった、ということですね。