組織なんて、ぶっこわせ!
つらら雪
あの日は今日(前編)
時計の針は十二を指す、真夜中。ただいま、わたしたちはみんなで映画カンショー会の真っ最中。
わたしん家はパパが映画監督なんだ!
だから、パパが手がけた作品はゼッタイ観てる!
映画館行かなくっても観れるのは、やっぱ映画関係者がパパの特権だねっ!
きっとクラスのみんなよりたくさん観てるだろーから、経験値は高い!と思う!
それなのに、首がかっくりこっくり舟をこいでるわたしは、飛鷹コヨリ!
ひばり小学校の小学五年生だよっ!
「コヨリ、もう眠たいよね。今日は、部屋もどる?」
と、視界のすみっこに浅葱色の髪がのぞいてきた!
シンパイ気にほほ笑むクールな彼は、刈輪要くん!
優しくてガマン強い、アコガレの幼なじみだ!
「うーんだいじょぶだよぉ~……」
とか返事しながら、わたしはもうソファーの上で半分夢の世界へイン!
すると、下のカーペットに座ってた要くんのお姉ちゃん・蓬子ちゃんがふり返った。
「おじさんがこんなジャンル作ったのって初めてだもんねー。ちょっと面白くないかな?刑事ドラマってさ」
蓬子ちゃんはカタチの整った眉をむーっとひそめた。
「えぇーっ、コヨリ面白くないか?でも要くんは楽しそうに観てくれてるねぇ。
どうしたんだ、珍しいな?」
「ちょっとおじさん、オレ毎回マジメに見てるよ」
「ウソぉー、表情ひとつも変わってないじゃん〜!おじさん悲しいぞっ!」
パパと要くんの会話に、蓬子ちゃんがあははっと笑う。
ところで、なんで家族じゃないのに、いっしょに暮らしてるかと言うと!
きっかけは、六年前の春にさかのぼる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「わぁああっ!!もみじちゃんっ、この黄色いのナニこれ!おいしいよ!」
「こよりソレ、たくあんっていうんだよ!」
「んふふふ〜、コヨリちゃんはホントに美味しそうに食べるねぇ。
こんなに喜んでくれるなんて作りがいがあるわぁ」
「ちょっともみじィ。あなたお重箱三段とか作ってきすぎよっ!食べきれなかったら食品ロスになっちゃうわよ」
「え〜かえで、あんた大食いじゃない! だから大丈夫よ。 それに、人生食べまくって食べまくんなきゃソンよ」
「昔から言ってるよね、そのナゾ持論」
春の空のした、昼下がり。
あの日は、わたしたちの通う幼稚園と、ひばり小学校が合同遠足だったんだ!
となりの市の大きな公園に行ってて。
蓬子ちゃんは、「友だちと食べてくる!」って言って違うところでお昼ゴハン。
残ったのは要くんと、要くんのお母さん・もみじちゃんそしてわたしとお母さん。
みんなでお弁当交換をして、お箸片手に団らんっ!
ちょうど桜の花が満開で、コワいくらいにキレイだったなぁ。
なんでか、アオムシが集まってきてギャーーーーッって叫んだキオクも無きにしもあらず……っ!
それでも、桜の花はひらひら舞ってて、まさに公園の広場は平和そのもの。
──そして、昼食タイムも終盤にさしかかったころ。
ふと駐車場を見たら、武装をしたヒトたちがたくさんいた。
フシギには思わなくってむしろ、さいしょは、テレビか映画の撮影かなって思ったんだ。
パパの職業柄、そーゆーのだって慣れてたしね!
でもカメラマンさんとか、そーゆー類いのヒトは見当たらなくって。
おまけに、ダレかのうおおおーーーーッっていう雄叫びを筆頭に、銃を撃ちまくって突入してきたんだ!
笑顔いっぱいの広場は、一瞬で恐怖と悲鳴オンリーに様変わりだった。
そのヒトたちは、銃声でみんなを脅しながらどんどん強引に広場のひとを、連れ去っていった。
わたしたちだって、例外じゃない。分厚い手袋をして手は、こっちにも伸びてきた。
しょっぱなから狙われたのは、幼稚園でもこがらなほうなわたし。
若そうな男の人が、銃を構えながらこっちへ攻め入ってきた!
組織なんて、ぶっこわせ! つらら雪 @tsurarayuki826
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