第38話 愛注入の間にて

 全裸待機……30秒で慣れたな。


 まあ、取り巻きズがあまりにもコチラに関心を示さないのもあるが……。

 若い女性もいるというのに、ここまでオレのモノに対して照れを見せんとは……


 くっ……無念だ。


「やあ。お待たせ早乙女君」


 入り口からマスターが仰々しく入ってくる。先程とは違う服装だ。祭事用の……いかにも司祭といった感じ。

 なんて似合わないんだ……。


「さて。早乙女君……君は神を信じるかね?」


 マスターの突然の問い。

 信じるもなにも入信しようと言うのだから「信じる」という他ないだろう。


「ああ、信じてる」


「なるほど……身近に神を感じているのだね早乙女君。では……今、宇宙が危ないという事実はご存知かな?」


 ?


「この地球だけでも……異常気象。災害。戦争。貧困……なぜ世界中でこのような事が頻繁に起こっていると思うね?」


「さ、さあ……?」


 マ、マスター? なんだ、その質問は? どうしたんだ?


「この事実は、なにも知らない君にはショックかもしれんが……人類は……いや、宇宙は全てセ・ガ・サタンという悪魔によって支配されているのだ。教祖である絶対神『プレジデント・ステージア』様は、キリスト、仏陀、モーゼなどの救世主メシアとなり転生を繰り返しながら戦ってこられたのだよ。そう……人類を奪還する為にね。近々、大規模な奪還作戦を行う予定だ。アルマゲドン。ふふ……もうすぐ終末が来る」


 こ、これは入信前の定型文なのか?

 セガサターンとプレステの話か?

 マスターの言っていることがさっぱり分からん。


「だが私達は戦えない……その力がないからね。では私達は宇宙平和を成す為になにをすればいいと思うね?」


「え? ……武器とか作るのか?」


「愛だよ。愛で宇宙を満たすのだ」


 愛?


「まあ……愛にも色々ある。家族愛。男女間の愛。無償の愛。自己愛。……友情も愛の形だね。しかしながら我々、全宇宙平和 愛融合教団はアガペー……即ち、無償の愛で全てを包み込むことで宇宙と融合し仮のベテルの中……神の空間を擬似的に作り出し……」


 マ、マスター……目がガンギマリだ。

 入信前の定型文を垂れ流してる顔じゃない。マジだ。このオッサン、マジで言ってる。

 これはアレか? マスターはもう……洗脳されてるってことなのか?


「ふふふ……ココまでは理解出来たかな? しかしだ。不必要な愛というものがあってね……なんだか分かるかい? 早乙女君」


「ふ……へ? え? あ……な、なんだろうな」


「男女間の愛だ。移ろいやすく脆い。博愛でもって全てを包み込まなければ、なしえない奇跡が必要なのに……個に執着する感情など邪魔だとは思わんかね」


「そ、そうだな」


「ふむ。早乙女君…君ならそう言ってくれると思っていたよ。では…始めようか」




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