第34話 先っちょだけだから!

 さあ。着いた。

 ここが全宇宙平和 愛融合教団の本部。通称『平和と愛の宮殿』だ。


 …………。


 …………。


 ラ、ラブホテルみたいだな……。

 

 神々しさってヤツが足りないんじゃないか?


 いや……ちょっと待て。


 ここに、うさちゃんマスク装着の拓と入れってのか?


 キツイ・・・な……。


「早乙女さん……ボク……ここに早乙女さんと入るのは……ちょっと」


「オ、オレだって嫌に決まってるだろう!」


 だが……すでに先遣隊との約束の時間が迫っている。

 こんな所でグズグズしてられん!

 

「よし行くぞ」


「い、嫌ですよ!」


 くっ! このバカ! 人通りも多いと言うのに!


「大声をだすな! 早く入るぞ!」


 拓の手を掴み強引に中に引っ張り込む。


「だってこれ絶対にラブホじゃないですか!? こんな所イヤだぁあああ! やめてぇえええ!」


「覚悟を決めろ! (オレの)借金があるだろ!? ヤル・・しかないんだよ!」


 くっ! 周りの視線が……痛い。


 コイツ……ふざけやがって!


 お前はマスクを被っているからいいが、オレは素顔だぞ!


 だが……


 いかなる障害をも乗り越えるのがハードボイルド!


 どんな手を使ってでも金貸しの拓をこの『愛の宮殿』に連れ込んでみせる!


 しかし……


 オレと拓では如何いかんせん馬力が違い過ぎる。ずるずると引きずられて行く。このままでは愛の宮殿から離れていってしまう。


「ちょっと入るだけだ! 分かった! 特別手当ても出そう! 1万! いや……2万円でどうだ!?」


「もうやめてぇえええ! その会話の内容が無理ですってぇえ!」


「ど、どっちだ!? お前は本当に勘違いしてるのか!? ちゃんとさっき話し合ったろ! いいから入ろう! な!?」


 くっそぉおおおおおお! びくともせんじゃないか!!

 ボケがぁあああああ! 拓の分際で、オレ様に歯向かうとはぁあああ!


 このアホ……うぐぐ……


 さっきちょっと説明したろうが……


 さっきちょっとだけ言ったろうがぁあ……


さきっちょだけ・・・・・・・って言ってんだろぉがああああ!」


 ハードボイルドパワー全開だぁあああああ!

 

「えっと……早乙女君。なにをしてるの?」


 え? マスター!


「ちょ、ちょうどいい所に! マスター! コイツを連れ込むの手伝ってくれ」


「え? なんで?」


「決まってるだろう!? ここに入れるんだよ!」


「え? ラブホテルに?」


「そう! ラブホテルに! え? ラブホテル? ラブホテル!?」


「うん……こっちは『ホテル愛の神殿ラヴ パルティノン』。ほら、あっちが『平和と愛の宮殿』だけど……」


 …………。


 紛らわしい……。


「だ、そうだ。なにやってる拓。行くぞ」


「だ、だから言ったじゃないですかぁ……」


 ふふふ……皆。

 ハラハラさせちまったな。

 だが、どうだ?

 勘違いもここまで来ると……


 ハードボイルドだろう?

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