第32話 金貸しの拓 再び

 あ。どうもお久しぶりです。

 

 え? カ、カツアゲじゃないですって。ボクですよ。ボク。

 

 金貸しの拓こと安田拓朗ですよ。

 

 え? こんな所で何をしてるのかって?

 やだなぁ。ココは早乙女さんの事務所前ですよ?

 

 借金の取り立てに決まっちょろうが!?

 

 あ……す、すいません……今日が返済日なんで、ちょっとスイッチが入っちゃいましたね。気を付けてはいるんですけど……。


 あの後……


「早乙女さんから、あんなに早く取り立て終わらせたのはお前が初めてだ!」 


 って。会社でえらく評価されてしまいまして……。

 もう完全に早乙女さんの担当者はボクって事になってしまったんですよ。


 まったく……皆、ヒドイですよね。面倒事は全部ボクに押し付けるんですから。


 じゃあ、無駄だとは思うんですけど……今日も張り切っていきますんで……

 あ……ドアの鍵は元々壊れてますから勢いよく開けてもビックリしないで下さいね。

 

 バン!

 

「オラァ! 早乙女ぇ! おまぁ金は出来ちょるんじゃろうのぅ!?」

 

「ん? おお……拓か。今日は早いな。ちょうどいい所に来た」


「…………。」


 ね?

 最近は早乙女さんもすっかり慣れてしまって……ボクがいくら勢い出しても、このザマです。


「早乙女さーん……ボクに慣れちゃうのはいいとして、お金は期日通りに返して下さいよー……」


「何でだ?」


「何でだ? って……いや、ボク怒られちゃうじゃないですか」


「ウソつけ。お前にまともに説教出来るヤツなんているわけないだろ」

 

「いやいや、怒られますよ! 面と向かってではないですけど……」

 

「そら見ろ。いや、だが……本当にちょうどいい所に来たな。借金、返せそうだぞ」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「ああ……大口の依頼が来てな。借金を返しても十分儲けが出る。だからお前、ちょっと手伝ってくれ」

 

「え? な、なにをですか?」

 

「なに……大したことじゃあない。着いて来てくれるだけでいい。2、3日で済む。……多分」


「着いて行くって……どこに?」

 

「ここだ」と早乙女さんが手渡してきたチラシを見る。

 

『全宇宙平和 愛融合教団』

 

 んー……? 宗教団体……かな?

 

「一度は勧誘されたことがあるだろう? 休みに家に訪ねてくる謎のおばさん2人組のアレだ」


 ???


「ない……ですね」

 

「一度も?」

 

「はい……」

 

 早乙女さん……外でボクに話しかけてくるヤツなんて……

 

「そうか……普通怖くて、お前に話しかけてこないか」

 

 そうなんだけど……ヒドイ…

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