第20話 ようするにただのオッサン

 そう、もうすぐ彼女が……

 くふ……くふふふふふふう……


 いや、待てよ。


 そういえば私はまだピーコを確保していなかったな。

 店にいるとはいえ……このままでは早乙女君の手柄になってしまうんじゃあないか!?

 こ、これはマズイ! 早く立たねば、


 ふっ!


 くっ!


 !!


 た、立てない!?


 ま、マズイ!


『倒れたフリ』をしてたつもりが……

 いつのまにか本当に立てなくなってしまっていたのか!?

 少々血を流しすぎたのか?

 そういえば、あたりは流血のせいか真っ赤になってるし……視点が定まらない。

 いや、しかし……それよりも……


 寒い……


 全身に力が入らない……

 もうアレだ。私は死んじゃうんだ……

 私の死因は、うだつのあがらない半分ニートの探偵に頭割られたことになっちゃうんだ。

 冴えないなぁ……

 うう……

 ああ……なんか……段々気持ちよくなってきた……


 ・・・・・・。


 !!


 聞こえる……。

 今、聞こえました!?

 声……

 彼女の声ですよ!

「すいませーん」って!

 あの可憐な声!! 聞こえませんでしたか!?

 私は……私は聞こえました!! ええ! 聞こえましたとも!!

 聞き間違い!? いや……

 私が私が彼女の声を聞き間違うはずがない!!

 うっく……うおおお!!

 う、動け! 動け! 私の体!!

 泣きボクロ……彼女がここに来たんだ……こんなところで倒れてるわけには……くふぅ!

 立て! 立つんだ! マスター!!

 ガクガク……ブルブル

 体が悲鳴をあげる……それでも私は……私は立たねばならない!


 なぜなら!!


 マスターは……マスターとは……


『まだまだ』『ステキな』『ただのオッサンの』の略だからだ!!

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る