第19話 そして現在にいたる
店員と客……その埋められぬ溝を私はただ埋めていきたかっただけなんです……
ストーカーって言葉がありますがね、私はそんなんじゃないんですよ。
私はね、彼女ともっとお近づきになりたかっただけなんです。
だから、彼女の後をつけて家を突き止めたりもしましたが……
ストーカーとかそういうのとはちょっと違うんです。
もっと、彼女のことを知りたかっただけなんです。それだけなんですよ。
だから、彼女の家のゴミをあさったりもしましたが……
でも、ストーカーとかそういうのとはちょっと違うんですよ。 いや、ホントそういうのじゃなくて。
それでね、色々と調べてるウチにあることが分かったんです。
彼女が一番大事にしてる宝物……
犬……そう、チワワのピーコです。
いやぁ……うらやましいワンちゃんですよ。
私、向かいのマンションを借りて彼女の部屋を見てたんですがね?
あ、いや、『ノゾキ』とかそういんじゃなくて……私、彼女が着替えたりする時はちゃんと見ないようにしてましたからね?
いや、いや、ワンちゃん。ワンちゃんですよ。
もうー……ハグしてもらったり……チューしてもらったり……一緒に寝たり……お風呂に入ったり…
羨ましいですよ! 憎い! 憎いですよ!!
そこで私思ったんです。
邪魔ですねぇ……
邪魔ですよ。
犬という皮を被った悪魔ですよ、アイツは。
それでね、私こう思ったんです。
コイツさえいなくなれば彼女はもっと私をみてくれるかもしれない……
コイツさえいなければ……ってね。
そこで私は泣きボクロ愛犬誘拐計画を企てたわけです。
実行犯はウチの店に来る飲んだくれの『鈴木』という男に頼みました。
どうせいつもウチで飲んだくれてるダメ男なんでね。タダ酒をちらつかせたら簡単でしたよ。
鈴木はいとも簡単に犬をさらってくれました。
最初はね……後はどうにでもしていいってことだったんですけど……
彼女が彼……早乙女君に依頼をしに来た時に聞いちゃったんですよ。
ピーコがどれだけ大切な存在かを……
そこでね……私ピンときちゃいまして。
もし、私がこのピーコを助け出したら彼女、私のことを見直してくれるんじゃないかって!!
お礼にチューくらい。 ハグくらい。
なんなら一緒にベッドインしてくれるんじゃないかって……
後は……ご覧の通りです。
鈴木のヤツがヘマをして私がうなだれて戻ってくると、店にはなぜかピーコが……
取り乱して早乙女君に掴みかかっていったところ……頭に一撃。
そしてココ……カウンターの裏にて現在、血まみれで横たわってるわけです。
ふう……まあ……
当初の予定とは狂ってしまいましたが……
もう一歩ですよ。
もうすぐここに……泣きボクロ……
彼女が来る!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます