第14話 灰皿


なぜ…なぜコイツがピーコを連れてるんだ?

だって…え?


「あの…その犬はお客様の…」


「ああ…いえ…違います。実はですね。この犬、早乙女さんが探してるみたいなんですよ。はは、かわいいでしょ?」


「……。」


「それで、その…彼、借金があるもので…」


「そのワンちゃんが人質…というわけですか?」


「いや…まあ…言い方は悪いですが、そう…なるんですかね?」


くう…卑怯な!!動物をたてにする気か!?この男!!


「あの…もし…もしですよ?それでも早乙女さんがお返さないって言ったら…そのワンちゃんどうするんです?」


「え?うーん…そうですね…その時は…ふ、ふふふ」


ニヤリ


な!なんだその笑みは…怖いよ…絶対食べるつもりだよ…チワワを?怖っ!


しかし…どうしたもんか…どこかで隙を見つけてピーコを連れ出すしかないが…


この男…さすが伝説の金貸し。まったく隙を見せん。


「っと…そうだ。ちょっとボク、さっきからトイレに行きたかったもので…すみませんがこの子見ててもらっていいですか?」


ええー!このタイミングで!チャンスじゃない!ここしかないでしょう!


こいつがトイレに行ってる間に…マスターには悪いがこのままピーコを外に連れ出して、そのまま泣きボクロの元に連れて行けば…


「ええ…行ってらっしゃいませ。急がずにゆっくりとひねり出してきて下さい」


「…あ…はぁ…いや、別にう〇こじゃないですからね?じゃあ、ちょっと頼みます」


バタン


ふっへっへ…さあ!ピーコ!行こうか!ご主人様の元へ!

オレはピーコを素早く抱き上げ…

ちょ…コラ!逃げんな!

ピーコは捕まえようとするオレから逃げるようにちょこまかと動き回る。

マズイ…こんなことで時間をくうワケには…早くしないと拓の野郎が戻ってくるってのに!


ガチャ


ドアが開く音に驚いたオレはトイレの方を見る。

いや、トイレは閉まったままだ。

開いたのは…裏口。店に入ってきたのは、なぜかうなだれているマスターだった。


「おお!マスター!いいところに!見ろ!犬が見つかったんだ!これで今回の依頼は…」


ん?どうしたマスターの様子がおかしい…マスター、どうしたん…

うぐぅ!

マスターは取り乱しながらオレの胸ぐらを掴み激しくオレを揺さぶる。

く、くるし…


「どこだね!どこで見つけたのかね!ええ!?この犬は…この犬は、私の…!」


ぐぐぅ…息が出来な…はな…離し…

オレはとっさに近くにあった灰皿を手に取り…マスターの頭を…


「離せー!!」


ゴシャア!


思いっきり殴りつけた。

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