第42話 俺たちの戦いはこれからだ!

「「「かんぱーい!」」」


 貸し切りにしたパーティールームで、ソフトドリンクを入れたグラスがぶつかる。


 校内予選を棄権したことで、急ぐ必要がなくなったのだ。


「本戦への出場で、2年のシルバーソードと、クラスメイトだが専用機を倒した……。いきなりPS(パワードスーツ)競技会のレギュラーになっても、目立ちすぎるから――」

「ちょうどいい成績……ですね!」


 上機嫌なキャロリーヌが、続けた。


「まあな……。梨依奈、『シルバー・ブレイズ』はどうだ?」


「私だけでは、目途も立たないわ! 早急に、整備チームを組む必要がある。最低でも任せられる1人」


 その返事に、みんなで考え込む。


「参謀本部から、パーツや武器弾薬を融通してもらわないと……。サブの整備士は、できれば同じ1年がいいが」


 なぜか同席している、マルティナ先輩の主任整備士である2年の令夢れいむが、すぐに突っ込む。


「女子にしとけよ? 男子にしたら、あんたらのハーレム部が崩壊するわ」


 冗談か? と思うも、彼女は真剣な表情だ。


 俺のほうを見た令夢は、理由を説明する。


「あんたがどう思っても、客観的にはハーレムでしかない! まだ自覚はないし、誰を本命とする余裕もないやろ? そこで、妹の出番や!」


 赤紫の瞳で、前髪ぱっつんだが、薄い青のロング。


 令夢と同じ雰囲気で、幼くした感じ。


 座ったままで会釈した女子は、同じ1年のプレートをつけた制服で、令夢の妹だと自己紹介。


 ちょうど、整備科。


 と言うか、同じ1組だった……。


花音かのんさん、だっけ?」


「はい。整備科で、一応はPS志望です……」


 ここで、彼女の姉である令夢が、補足する。


「ウチにも立場があるから、今後はマルティナに集中するわ……。今の時点で、あんたらがサブの整備士を見つけていないのなら、妹を推薦する」


「お姉ちゃんに売られたー!」


 せめてもの抵抗か、姉に噛みつく花音。


 けれど、令夢は構わず、説明する。


「ウチと姉妹だから信用できへんのなら、そこまでや! まあ、考えてみて」


 アリスが、まとめて答える。


「参謀本部には、もう協力を要請した。今回の実績で、向こうも断らないだろう……。花音については、本人がよければ、チームに加わってもらおう。他で探しても、面倒なだけ! 腕が良くて信用できる人材は、どこかで囲われているよ? 参謀本部にそこまで丸投げするのなら、逆に梨依奈が一番下の見習いにされる」


 言われた梨依奈は、しぶしぶ同意。


「ええ……。参謀本部が手配するような整備チームが来たら、私は雑用ね。下手すれば、食事の用意や洗濯をやるだけ」


 俺は、その光景を想像する。


「才能うんぬんの前に、キャリアと知識が違いすぎるか……」


 アリスが、自分の意見を述べる。


「参謀本部に委託すれば、『シルバー・ブレイズ』に何を仕掛けられるか不明だ。最悪、オーバーホールの名目で持っていかれて、そのまま梯子を外される」


「ああ、その危険もあったか……」


 俺が嘆息したら、アリスはこちらを見た。


「今のままでも、『稼働データを寄越せ』『このテストをしろ』はあるだろうけどね? 普段の整備から丸投げとは、ぜんぜん違うだろう」


 沈黙が流れた。


 キャロリーヌが、花音に尋ねる。


「あなたは、どう考えていますか? 自分の評判や将来をかけるから、無理にとは言いませんが」


 少し悩んだ花音は、率直に言う。


「私は、派閥がある部活に入っていないし、『シルバー・ブレイズ』にも興味がある。PSの整備士としてクレジットされるのなら、悪くないけど……」


 パリパリと、ポテチを食べた後に、ドリンクを飲んだ。


「ハーレム部に加わったら、周りの評判もあるから……。私に男女関係を強制しないことだけではなく、卒業するまでの待遇と、そのあとの進路も保証して」


 首肯したアリスが、可愛い声で答える。


「ボクの名義で、参謀本部に掛け合うよ……。ただし、梨依奈を主任整備士として、その他にも禁止事項を作るから。PSの整備士として経験する場も、何とかしよう」


「なら、受ける!」


 即答した花音に、アリスが釘を刺す。


「信用できないか、腕が悪いままの場合はクビにするから。そこは覚えておいて! 契約書にする」


「分かったー!」



 とりあえず、サブの整備士は確保した。


「整備士は、どういう人間関係だ?」


 俺に質問に、花音が答える。


「チームだから、上下関係が大変……。1年は、雑用と面倒なところだけ!」


「マルティナの主任整備士をしているウチの妹だから、ずっとパシリはないやろうけどな? それでも、先輩に気に入られるかどうかで、雲泥の差や! ウチはシルバーソードの専用機を任されているから、整備科の先輩も絡んでこんけど」


 人数が多ければ、それはそれで面倒なのか……。


 そう思いつつ、ふと気づく。


「今度の大きな行事は、ニューアースに近い宙域での練習航海だっけ?」


「うん!」

「それまでに、『シルバー・ブレイズ』を動ける状態にしないと……」


「練習艦とはいえ、貴重な航海だ」

「私は、ウンザリするほど、やりましたよ」


 三者三様の意見を聞きながら、思う。


 やっぱり、女子だらけだ。


 ともあれ、この学園生活は、まだ始まったばかり。


 今後も、俺の実績を積み上げなければ、後がキツくなっていくだろう。

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前世っぽい感じで人類を救ったから学園生活を満喫します~エースと言われても適性ゼロだから知りません~ 初雪空 @GINGO

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