いもうと様様

平 遊

いつもありがとな

「明日出かけてる間は雨降ってほしくないんだよなぁ……」


 妹に聞こえるくらいの声で呟いてみる。

 これできっと、明日の外出時は雨は降らないはずだ。


 俺は実は、妹には特殊能力があったんじゃないかと睨んでいる。

 例えて言うなら、魔術師的な?


 体が小さくてよく熱を出しては寝込んでいた妹が、俺は可愛くて仕方がなかった。親に言われるまでもなく、俺にできることは何でもしてやりたかったし、いつだって守ってやりたかった。


 でも、良く考えれば、守られていたのは俺の方だった。

 俺がイジメられて帰ってくれば、翌日にはそのイジメた奴らは何故か傷だらけになっていて、何故か俺にビビっていたし。

 天気予報がどれだけ大荒れの天気を予想していたって、俺が楽しみにしている行事は1度も荒天で中止になったことはなかった。

 ……ただ一度だけ、初デートで浮かれすぎていた時だけは、嵐になって流れたけど。でも結局あの相手、実は性格悪くて付き合うまでには至らなかったんだよな。

 もしかしたらそれを分かっていて、妹はわざと嵐を呼んだのかもしれない、なんて今は思っている。


 翌日。


 天気予報では土砂降りの予想だったが、俺が出かける時間になると、雨雲はいずこへか去って、空には雲一つ無かった。


「いつもありがとな」


 仏壇の中、妹の位牌に向かって手を合わせる。

 幼くして逝ってしまった、俺の可愛い妹。

 妹は、なんとなく魔術師として、今でもここに、俺のそばにいてくれているような気がしている。

 そばにいてくれるなら、黒魔術師でも白魔術師でも、俺は一向に構わない。

 ほんと、いもうと様様だ。


 これからもずっと、兄ちゃんのそばにいてくれよ、な?


【終】

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