決着

「ぐぎぎ……っ」


 決着は一瞬だった。

 僕が神力の最大量を底上げした瞬間。


『ぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああっ!?』


 不完全な神にのしかかり、圧迫する神の力がはるか高くに増大され、再生の余地などもないほど完ぺきに圧倒的な力でその存在を叩き潰す。


「ふぅー」


 僕はそれを確認すると共に自分の体内で荒ぶる神力を鎮静化させていく……自分という存在の格は神社の方に宿っている。


「んんっ」


 一度荒ぶった神力を抑えるだけでも一苦労だ。


「ふぅー、ふぅー、ふぅー」


 息を吐き、自分という存在を人間の方に傾けていく。


「……よし」


 落ち着いてきた。

 僕は神力を完全に抑え込めたことを確認して口を開く。


「神薙さんもう視線を上げてもいいよ」


「あっ、本当?」


「うん、だいじょ───っ」


 神薙さんへともう顔を上げていいことを告げている途中で。


「……えっ?」


 僕はとあるものを見てしまう。


「……うそでしょ?」


 自分の前にあるもの。

 それは空間に大きく開けられた巨大な亀裂であった。


「何これっ!?」


「わからないっ!?」


 僕は神薙さんの言葉に対して動揺で答える。

 自分が完全に神力でつぶしたはずの不完全ある神……そこに出来上がってきた空間の亀裂を前にどうすればいいか、僕は悩みを見せる。

 それが不味かったのであろう。


「わわっ!?」


「きゃっつ!?」


 僕と神薙さんの体が吸引力に吹かれて体が浮かび上がる。


「……っ!?」


 子供たちに、イキシアは巨大な空間の亀裂に呑み込まれているような様子は全く見えない。

 僕と神薙さんだけが呑み込まれているようだった。


「……いや、なんでだよっ!」


 意味がわからない。

 もしかしてこれは、元の世界に関するもの、なのだろうか?

 ……いや、でも簡単に乗っていいものじゃ。


「とは、言ってもこれ、抗えない……っ!」


「あぁーっ!」


 僕は神薙さんと共に、何も抵抗できずに空間内に空いた亀裂へと呑み込まれてしまった。


「きゅーいっ」


 自分の耳に残ったのは、誰ともわからぬイキシアの鳴き声であった。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

自宅の庭にあるダンジョンで魔物を育てているモブ高校生の僕、クラスの美少女配信者を新種の魔物を引き連れて助けた結果大バズりしてしまう リヒト @ninnjyasuraimu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ