第4話 ダイアナン村

オーガのカイザードと一緒に、ダイアナン村を目指して一時間程で村と思われる板張りの壁が見えて来た。

簡素ながら木の門があり、槍を持った門衛らしき若者が立っている。良く見れば、頭に犬耳っポイのが付いてるし尻尾もあるから獣人なのか?


カイザードと俺が犬耳の若者の前まで行くと、若者がカイザードに話し掛けて来た。

「カイザードさんお疲れ様です。フォレストボアですか?良い型ですね。ところで、そちらの方は?」

見知らぬ俺を訝しげに見て来る若者にカイザードが返答する。

「魔の森で迷っていたところを我が保護した。取り敢えず、村に入れてやってくれ。」

迷子のおじさんとは、恥ずかしい限りだが事実なので仕方がない。

「司馬京也だ。よろしく。」

「ガルフォードだ。えっと・・・シバァ・・キュー・・・?」

日本名は言い辛いのか?カイザードはちゃんと言えたのにな。つうか、ガルフォードって・・・こっちの奴らの名前はカッコイイ名前ばかりだなオイ!

「シバでいいよ。」

「そうか。すまんシバ。ダイアナン村にようこそ。」

ガルフォードは苦笑しながらも歓迎してくれた。


村の中に入ると、人の数はまばらではあるが結構多い気がする。

村にしては大きいのかもしれないな。

そんな町民にめっちゃガン見されてるのは、俺が余所者だからなのか、服装がスーツ姿だからなのか・・・両方かな?先ずは目立たない服装にはしたいが、金無いしなぁ。

取り敢えずカイザードに確認して見るか。

「なぁカイザード。もしかして余所者ってあんまりいないのか?すげえ見られてる気がするんだけど。」

「ん?ああ。多分お前の服が珍しいのだろう。それと、黒髪は滅多にいないからな。」

原因は服装と黒髪かぁ・・・まぁ黒髪については、滅多にって事はいない訳じゃないって事で良いとして、服は早々に変えたいところだな。

今後の事を思案してると、カイザードが話し掛けて来た。

「先ずは村長に挨拶に行く。村長はエルフでティアロットと言う女性だ。」

エルフ!!ゴブリンと並ぶ、まさにファンタジーの代表格!微妙に失礼な言い方だが、それだけメジャーな存在と云う事で勘弁して欲しい。

テンプレなら、のじゃロリや巨乳エルフだが・・・まさかのシワシワ婆さんの可能性もあるな。さてさて、初エルフ楽しみだな。


5分くらい歩いたところに、屋久杉を更に倍くらいの大きさにした、やたらデカイ木の前に着いた。

見上げると、上の方に家らしき物が見える。エルフと言えばスカイツリーって事か。つうか、これ登るの?東京タワー並に高いんだけど・・・こんな村にエレベーターがあるとは思えないし、普段使い悪過ぎないかこれ。

俺がそんな事を考えていると、祠の様なところにいるカイザードに手招きされた。

カイザードの横に立つと、俺等の下に魔法陣が輝き出した。これって・・・魔法か!!

一瞬で景色が変わり、何もない部屋に着いた。きっとここが上に見えた家の中なのだろう。

物は何もないが、部屋の隅に小さな女の子がいた。ん?女の子?なんか縮尺がおかしい気がする。

その女の子は身長が1メートルくらいしか無いのだが、見た目は高校生くらいに見えるのだ。何言ってるか分からないかもしれないけど、女子高生をそのままの見た目のまま、1メートルくらいに縮めた感じなのだ。

俺が彼女を見て呆然としていると、カイザードが彼女の紹介をしてくれた。

「彼女はハーフリングのフィルナーシャだ。」

ハーフリング?なんか聞いた事があるな。小人族の一種だった気がする。小人族と言うと、有名なのが某指輪を運ぶ物語のホビットやコロボックルだが、確か語源は「半分」とか「未成年」を意味する「ハーフリングズ」だったかな。

確かに、人の半分くらいしかないな。でも、全然ロリじゃない。金髪ショートヘアーで耳が少し尖ってて、若干童顔ではあるがボン・キュ・ボンのエロボディーだ。小さなギャルだな。

「フィルナーシャと申します。村長がお待ちですので、ご案内致します。」

声もエロ可愛いな。あれだね、某ギャラクシーな歌姫の声に似てるから「私の歌を聴けぇ!」って言って欲しい。

因みに、カイザードの声は同じ作品のシリーズである、7番艦艦長の眼鏡イケオジの声に似て、めっちゃイケボだ。


フィルナーシャさんの後に付いて行くと、カーテンの様な物で囲われた部屋に着いた。

「ティアロット様。お客様をお連れしました。」

フィルナーシャさんが部屋の中に声を掛けると、中から若い女性の様な声がした。

「お入りなさい。」

ヤバイ。めっちゃ好みの声だ。この声でシワシワ婆さんだったら俺は立ち直れないかもしれない。

風が吹く谷に住む、青い服を着た虫と仲良くなるお姫様の声に似てるのよ。キツネに似たリスになりたい。


中に入ると、部屋の奥に天蓋付きの椅子に座る絶世の美女がいた。

長い銀髪で陶磁の様な白い肌、少し切れ長の翡翠色の瞳で耳がかなり長く尖っている。服装は昔の物語の天女様の様な服で、めっちゃ神々しい感じだ。

「貴方が魔の森で迷っていた彷徨い人・・・そちらの言葉で言うと異世界人ですかね。」

「なっ!?」

異世界人なのバレてる。何でだ?初めて会ったはずだし、カイザードにも言ってないのに。

「心配しなくても、異世界人だからと言って危害を加えたりする事はありませんから。何故、貴方が異世界人である事を私が知っているのかと言うと、精霊が教えてくれたからです。」

なんと!精霊もいるのか。しかも、精霊と話しが出来るとは、流石ファンタジー。バレてるなら嘘を付いても仕方がないな。

「多分、俺は異世界人で間違い無いと思います。なんでこの世界に来てしまったのはわかりませんけどね。」

「ほう・・・キョーヤは彷徨い人だったのか。」

カイザードにはバレてなかったらしい。なんか、カイザードって細かい事気にしなさそうだもんな。

俺みたいな出自不明者を、疑いも無く村に案内するくらいだし。


「カイザードは人を見る目がありますから、悪人かそうでない者かはわかるのですよ。」

オイオイ。さらっと心読まれてないか?

「お察しの通り、私には精霊が見え、人の心を読む事が出来る翡翠眼を持っています。」

やっぱりか。まぁ心を読まれても特に疾しい事はしてないから別にいいけどさ。ただ、あまり気持ちの良いものではないな。

「心配せずとも、これより心を読む事は致しません。一応、悪意が無いか確認したまでですので。」

良かった。ティアロットさんが俺の好みどストライクなのはバレてない様だ。こんな綺麗で可愛いらしい声の彼女がいたら幸せだろうなぁ。って!ティアロットさんめっちゃ顔赤くして照れてるやん!?つうか、まだ心読んでるじゃん!!

「も・もも・・・申し訳ございません!!」

ティアロットさんって、男にあんまり耐性がないのか?めっちゃアワアワしてる。あれだけ綺麗で可愛いかったらモテモテだろうから、言われ慣れてると思うのだが。

「ティアロット様は、村の象徴であり、尊敬や崇拝されるお立場なので、男から言い寄られる事は無いのだ。」

ああ、所謂高嶺の花的な感じで畏れ多くて近付けないヤツね。

まぁわかるけどね。こんな40歳のおっさんが好意を寄せてるのを知っただけで照れてるくらいだし。

「申し訳ありません。余りにもお美しくて、年甲斐もなく好意を寄せてしまいました。」

どうせ読まれてるなら正直に言っておこう。俺は中学生でも、ましてや童貞でもないから、このくらいは照れずに言える大人だからな。

「はぅ・・・!」

ティアロットさんが、更に真っ赤になって固まってしまった。マジ耐性ないのね。

「ティアロット様!?ちょっと貴方!ティアロット様に対して不敬ですよ!」

フィルナーシャに怒られた。でも、心を読まれてるとは思わなかったし、好みなんだから仕方がないと思うんだよなぁ。

うん。俺は悪くない。

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引き籠もりニートが異世界行っても上手く行くわけないよね 忍足忍 @nin-ken

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