第7話 友人
キーンコーンカーンコーン…
キーンコーンカーンコーン。
一限目の終了を知らせるチャイムが鳴る。
僕は思いっきり上に手をあげ、体を伸ばす。
「眠い。」
高校生たるもの、眠気はいつも側にあるのだ。
僕が次の授業の準備をしようとして、立ち上がると、同じクラスの
「どうよ。調子は?」
「いつも通りかな。」
彼は僕の数少ない友人だ。僕とは違い、誰とでも仲良くなれる人である。なのに、一人でいる僕を気にかけているのか、よく喋ってくれる。
総じて、いいやつだ。
「情報の課題やった?」
海斗に言われて、思い出した。今日は情報の課題があった。確か、プログラミングを作るやつだった気がする。
「やってないわ。」
「雷人毎回出してないじゃん。テストも赤点だし、単位落とすぞ。今年、単位落としすぎて留年するやつもいるんだから。」
「海斗も大概だけどな。」
2人で苦笑する。お互いこの学校では、バカに近い位置付けになる。
しかし、僕らの学校はいわゆる進学校というやつであり、相対的に見れば僕たちは頭の良い人になるはずだ…
そんな野暮な事を考えていると、海斗が突然、顰めっ面を浮かべた。
何か変な事言ったかなと、僕も少し身構える。
しばらくして、海斗が口を開いた。
「あのさ、雷人って坂本水と付き合ってる?」
ーーーーーーーーーーえ?
僕は一瞬、時が止まったかのように思えた。
自分の痛い所を突かれたからである。
水と付き合う覚悟は今の僕にはないし、何より恋をするという事に恐れがあった。
もし、水が僕と付き合っても、周りからは不釣り合いだと言われるだろう。
それに、まだ付き合ってないし、下手に付き合ってると思われて水が僕に飽きたとしたら、とても面倒くさい。
今の自分のウィークポイントが水に関する事だという事を見て見ぬふりをしていた。
「なんで…?」
僕はしらばっくれる。
海斗の聞き方は疑問形だから、誤魔化せば何とかなるかもしれない。
「俺見ちゃったんだー!雷人と坂本が一緒にマックに入るの」
海斗がにやにやしながら、言った。
続けて海斗がどうよ、どうよと連呼する。
僕は絶望した。加えて、海斗が憎いと初めて感じた。
僕がこの場を凌ぐ一手を考えている時、奇跡的に二限目が始まるチャイムが鳴った。
「やべ、準備してなかった。」
「あ、俺も。」
僕たちは慌てて準備をする。
その光景が二限目担当の先生に見つかって、早くやっとけよと野次を飛ばされてしまった。
すみませんと弱々しい声を出しながら、席に戻る。
シャーペンを持ち、訳もなく教室の壁に立て掛けられた時計を見つめる。
あぁ、困ったな。どうしよう。
僕の気持ちとは相反して、時計の針は動き続けていた。
君が笑顔になれたら 葉山 雫 @hayama_iro
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