第6話 当たり前の今日

水とマックで話してから、1週間の時がたった。


土日休みが終わり、また今日から学校が始まろうとしている。 


憂鬱だなと、昔の朝は決まってそう感じていた。


しかし、今は違う。


学校に行くのが少し楽しみになった。


大して友達も多いわけじゃないし、スポーツも勉強もずば抜けて、できる訳じゃない。

ただ一つ変わった事があるなら、水と出会えたことだ。


僕らの学校は最寄りの駅から歩いても、10分以上は平気でかかる。学校に行くまでに300mくらいの急坂があるのも、特徴だ。


そのため、友達と駅前で待ち合わせをして、一緒に登校をする人も多い。


僕はイヤホンで音楽を聴きながら、一人虚しく歩いているのだが。


水は駅前で待ち合わせしている友達がいるため、僕が駅を抜けようとする時は大抵、水の顔を拝む事になる。


以前、僕は水を見ても気づかないふりをして、そそくさ立ち去ろうとした。だけど、水はそんな僕を見て、


「おはよう。」


と言ってくれたのだ。


おまけに、水は必ずニコっと笑顔を見せてくれる。


そんな水の笑顔を見れる事が、俺の朝に大きな活力を与えていた。


僕は、朝の支度をする。ご飯を食べて、歯を磨いて、制服を着て、バックを背負って。その一つ一つの行動に意味があるように。


自転車の鍵をもち、家を出る。


家の鍵を閉めて、自転車のロックを解除する。


自転車を漕ぐ。


駅に着く。


定期券で改札を通る。


電車に乗る。


本を読みながら。


学校の最寄り駅に着く。


駅を抜けようとする時、水の笑顔を見る。


「おはよう!」


「おはよう。」


長く、重い坂を登る。


一人で音楽を聴きながら。


学校に着く。


バックを下ろして、席に座る。


一限目の準備をする。


一限目のチャイムが鳴る。


僕はペンを持ち、授業に臨む。


「今日も幸せだな」


当たり前の今を大切に。


そう思えるようになれたのは、

君と出会えたからだよ。

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