第5話 知ること 

「ねー!ここ最近行ったの!美味しそうでしょ!」


「生クリーム多いね…確かに美味しそう!」


「ねぇ笑。絶対、美味しそうって思ってないしょ?」


僕は甘いもの全般苦手だ。食べれないわけじゃないが、好んでは食べない。


僕たちは、かれこれ1時間話していた。彼女のコミュ力の高さには、驚きあきれるほど凄いものがあると実感している。


そして、話している中で水の事をたくさん知ることができと思う。彼女は生粋の甘いもの好きだ。


水が僕に写真を見せてくれたのだが、

生クリームが山盛りのパンケーキ、どてかいパフェ、グミやお菓子も僕なんかとは比にならない程の量が存在していた。


彼女の美貌の秘訣が、もしかしたら甘いものなのかと、自分の中にある矛盾の正当化を図ろうとした事もあった。


結局、人それぞれだなという結論になってしまったのは申し訳ないが。


「結構、私たち話してるね。初対面なのに笑」


「ね。僕も女の子とこんなに話したことないよ。」


「えー雷人、私的に話しやすいけどな。女の子と話し慣れてるなって思った。」


「全然ないよ。そんなにモテる人生送ってない。」


「でも身長高いよね。何センチ?」


「180ぐらいかな?」


「たか!!!」


「水も女の子の中だったら高くない?」


「うん。165はあるかな?」


「高いじゃん。十分。」


「まぁ。低い身長も憧れるけどね。女子って身長低い方がモテるって言うし。」


水は自分の事になると、意外と謙虚な所もあるのだ。


「水って彼氏できた事とかないの?」


「ないよ。一度も。」


流石にこの言葉には驚いた。こんなに可愛いのによく僕に至るまで、恋愛して来なかったなと。


「だから私も雷人と同じで、あんまモテる人生じゃなかったかな。」


何かあるな。そう僕は感じた。


僕は人より、他者の感情を読み取るのが得意だと自負している。


まぁ、別に詮索するほどの事でもないけど。


「雷人!ごめん私もう行かなきゃ!この後、病院行かないと行けなかった!」


「りょーかい!ありがとう。今日は。」


「こちらこそだよ!あ、ライン!交換しよ。」


僕は慣れない手つきで、ラインを開き自分のQRコードを見せる。


「ありがとう!これからも仲良くしてくれると嬉しいな」


水は、天使のような笑顔を僕に向ける。


こちらこそ。僕は小声でそう伝えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る