第4話 なごみ

 僕たちはオーダーを注文しに、店のカウンターまで向かう。


 僕はMサイズのドリンクとハンバーガーを。


 彼女はSサイズのドリンクとサラダを頼んだ。


 ファストフード店でサラダって、不覚にもそう思ってしまった。


 しかし、彼女の美貌やスタイルの良さはこういう日常の一コマから、成り立っているものなんだと納得もする。


 オーダーを待っている間、初対面ながらも好きなメニューやドリンクの話しができた。


マックのサラダはよく食べるらしい。もちろん、ポテトもハンバーガーも好きらしいが。


やはり、彼女なりの気まずさも拭い切れないのだろうか。


 たまたま、同じタイミングでオーダーが届いたので席まで一緒に戻り、僕たちは腰を下ろす。


しばらくの沈黙から、話しを始めたのは彼女からである。


「部活は何してるの?」


「テニス部です」


「そうなんだー!すごいね。私前やってみたことあるけど、全然出来なかった笑」


「むずいよね」


 思った事をそのまま、言う事しかできない自分が情けない。


「遅いけど、何て呼んだらいい?」


 ここでニックネームを言う人はかなりネックになるだろう。やはり、ここでは名前を伝えるのが王道である。


「"らいと"で大丈夫!そちらは?」


「普通に"すい"でいいよ!」


 会ってまだ30分経ったか経ってないかの人との名前呼びは、中々慣れないものもがあった。


 どうやら、すいは慣れっこのようだが…


「それ何ー?」


 すいは僕の頼んだハンバーガーに興味を持ったようだ。


「スパチキ」


「へーおいしいの?」


「うん。少し辛いけど、中のチキンとあってる。あと安いし」


「そうなんだ!私も今度食べてみようかな」


「ハンバーガーとか食べるの?」


 僕はふと気になった。華奢でスタイルお化けの彼女がハンバーガーにかぶりつく姿が想像できなかったのだ。


「え笑食べるよ笑煽ってる??」


「いや!そんなつもりなかった!食べなそうだなーって」


 僕は必死になって弁明する。


「そうかなー。食べる時は食べるんだよ!」


 すいの顔は前より穏やかになった。

 何気ない一言が、僕らの雰囲気をよくしたのだろうか。人の心は本当にわからないな。


 そう思いつつ、僕の心にもが作られている事に、この時の僕はまだ気づけなかった。

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