第27話 我が邪龍の力を欲するのか?

 青春謳歌部の扉を開いて現れたのは、気弱そうな女子だった。


 同学年、だろうか。なんだか朝礼とかで見かけたことがある気がする。

 

 髪の長い女子だった。そしてやはり目につくのがその胸部。男ならどうしても目が吸い寄せられてしまうであろう巨乳がそこにあった。


 その人はオロオロしながら、


「あ……ごめん……先客が、いた……?」

「大丈夫ですよ」答えたのは雪落ゆきおちさん。「私たちの用事は、あとでも構いませんから」


 まぁたしかに。明日でも明後日でも問題はないだろう。最終的に……ヴィントが初恋の人か否かが判別できれば良いのだから。


「まぁ、座りたまえよ」ヴィントは女性を椅子に促して、「して……用事とは何かね? 我が邪龍の力を欲するのか?」

「じゃ、邪龍……?」ようやくまともな反応をしてくれる人がいた。「どういうこと……?」

「真の力を欲するのは無欲ゆえか……それもよかろう」なに言ってんだコイツ。「得てして、無欲は強みだ。誇るが良い」

「あ、うん……」困ってる困ってる。「それで、あの……用事っていうのは……相談事で……」


 相談する相手を間違えているだろう。なんでヴィントに相談しようと思ったんだよ。


 というか……


「僕たちは……出てたほうが良いかな……」

「だ、大丈夫だよ……聞かれて困ることじゃないから……」というわけなので、その場にとどまらせてもらった。「相談っていうのはね、その……恋愛相談で……」


 それから彼女は顔を赤らめて、


「私……好きな人がいるんだ……それで、その人と仲良くなりたいなって思うんだけど……」なんとも高校生らしい悩みだ。「それで……その、好きな人を追いかけるのも青春の1つだと思ったから……この部活なら、協力してくれるかなって……」

「お安い御用だ」相変わらず安心感がある声だ。「この部活は青春を謳歌する人々を応援する部活だ。この我の力……存分に貸してやろう」

「ほ、ホント……?」

「ああ。任せろ。我を頼った時点で、成功したも同然だ」


 実際に頼りになる男だからな。この言動で……能力は非常に高い。僕が知る限り、もっとも能力の高い男だ。


「ありがとう……」


 涙ぐむほど緊張していたらしい。


「泣かなくても良い。級友の頼みを聞くことも、また青春だ」出たコイツの万能ワード。「では、さっそく本題に移ろう。そなたの想い人とは、何者だ?」


 僕も気になっていた。この彼女が好きな人とは誰なのだろう。


 生徒会長、だろうか。あるいは他の人か……


「……ごめん……」なぜか彼女は頭を下げて、「それは……まだ言えないの……」

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