第25話 青春おうか部

 青春謳歌部の部室へ向かいながら、僕は言う。


「そういえば雪落ゆきおちさん……部活とか入らないの?」

「今のところは考えていません。ですが……」

「ですが?」

「ちょっと……青春謳歌部に興味があったり、します」


 なんだか意外だった。雪落ゆきおちさんが部活に興味を示すとは……そういうのには興味がない人だと思っていた。


 少し心境の変化でもあったのだろうか。


 ともあれ、


「入部してみたら?」

「……考えておきます」


 雪落ゆきおちさんが入部するなら、僕も入部しようかな……いや、それは下心が強すぎるだろうか。雪落ゆきおちさんのことを好きになってしまうだろうか。もう好きになってるから関係ないだろうか。

 

 そんなことを考えながら、僕は廊下を歩き続ける。


 そして3階の隅っこのほうにある教室の前までやってきて、


「たしか……ここだったはず」


 教室の扉に、紙が貼り付けられていた。


 豪快な文字で『青春おうか部』と書かれていた。漢字くらい調べろ。というか部の文字が見切れてるんだよ。文字のペース配分を何も考えてないだろ。


「……なかなか豪快な人みたいですね……」


 文字を見るだけで伝わってくる。なにもかも豪快で適当な男だ。


「とりあえず……入ろうか」僕は扉に近づいて、雪落ゆきおちさんに言う。「その前に、少し注意点」

「なんでしょう」

「中にいるのは……超適当な男だから。アイツの言葉を真に受けたらダメだよ」

「お知り合い、なんですか?」

「……腐れ縁、かな……」


 幼馴染に近いのだろうか。幼稚園から一緒で……なんか僕は気に入られてしまった。


 まぁ僕も……アイツのことは嫌いじゃないから良いけれど。


「じゃあ……行くよ」


 そう言って、僕は青春謳歌部の扉を開けた。

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