第15話 合言葉はなんですか?
教室を出て廊下を見回すが、すでに
しかし、生徒たちがざわついている方向に行けば
そして移動するのは人の少ない場所だ。なんとなく想像はできる。
「旧校舎、だよな」
この学校には旧校舎がある。今は使っていないが、生徒数の増減に伴って使われる可能性もあるらしい。その場所が旧校舎と言われている。
おそらく目的地はそこだ。あそこなら人もほぼいない。
生徒たちがザワザワしている方向に早歩きで移動していくと、案の定旧校舎あたりに行き着いた。やはり人に見られたくないことをするときは、ここだよな。
さてその旧校舎の校舎裏に回ると、
「なぁ、いいだろ?」先輩の声が聞こえてきた。どうやらビンゴらしい。「10年前に出会って、こうして高校でも出会えた。これは運命だ
僕は校舎に隠れて様子をうかがう。もしかしたら本当に初恋の人本人かもしれないのだ。うかつに手出しはできない。
しかし
「……運命、ですか」壁に押し付けられた状態の
「当然だろ?」
「では、合言葉はなんですか?」……合言葉……そんなものがあるのか……? 「10年前の……私とその人物だけが知る合言葉です。その合言葉を伝えられたら、あなたが初恋の人だと認めます」
……合言葉……その言葉とはなんだろう。ある程度の予測はできるけれど。
「ああ、覚えてる覚えてる」先輩は明らかなウソをついて、「忘れないようにメモしてある。それは家にあるから……帰ったら確認するよ」
「なるほど……」そこで
……
なるほど。なんとなく合言葉というものの意味がわかった。
だが先輩にはわかっていない様子で、
「なに言ってんだよ。覚えてるって言ってるだろ? だから――」
先輩が初恋の相手じゃないと確定した段階で、もう様子見をする必要はない。
「
「ああん? なんだお前?」
「僕はただのクラスメイトですよ」残念ながら運命の人じゃない。「ちょっと
「用事? そんなもん、あとにしろよ」
「急ぎの用事なんですよ」言った瞬間、僕は先輩たちの背後を見て、「あ……先生」
僕の言葉を受けて、先輩たちは大慌てで振り返った。そうやって慌てるということは、やましいことをしていた証拠だ。
しかし、振り返った場所には誰もいない。教師なんて影も形もない。
「……?」
先輩たちが困惑している間に、
「失礼します」
しかし
「な……! おい!」
先輩たちは追いかけようとしてくるが、もう遅い。
僕は言う。
「いいんですか? そろそろ、人が集まってきますよ?」
「……」
先輩たちは立ち止まって、苦々しい顔で僕を睨んできた。
僕の言葉は当然ハッタリだ。こんな旧校舎のウラに人が集まってくるとは思えない。
なんで先輩たちは僕の言う事を信用してくれるのだろう。さっきの先生のくだりも嘘だったのに。
「では、失礼いたします」
僕はそう言って、校舎に戻った。
……
……
ああ……
怖かった。
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