正しいとか正しくないとか

第12話 根気よく

 運命というのは変えられないものなのだろうか。


 僕の人生は運命で決められていて、行き着く先も通過点も同じになるのだろうか。


 僕が雪落ゆきおちさんを好きになって、そして結ばれないことも確定しているのだろうか。


 それは悲しいことだ。僕の初恋というのは最初から実らないものだということになってしまう。


 でもそれでいい。雪落ゆきおちさんが幸せになる運命が決まっているのなら、それでいい。惚れた弱みってやつだ。


 ……


 ……


 10年前の僕に言っておきたいことがある。


 河原で困ってる美少女がいたら助けておけよ。





 雪落ゆきおちさんを無事に家まで送り届けて、翌日。


 いつものように僕は登校した。とくに面倒事には巻き込まれずに、当然のように遅刻寸前で学校に到着した。別にギリギリに来ようと思っているのではなくて、朝が弱くてギリギリになるだけである。


「初恋の人、見つかった?」今日も大人気の転校生周りだ。「手がかりとか……」

「まだ、ですね」昨日の今日で見つかるわけもない。「まぁ、根気よく探してみます。すぐに見つからないことは覚悟しているので……」


 そこまで言って、雪落ゆきおちさんは教室に入ってきた僕に気づいたようだった。


 ニコッと、微笑まれてしまった。そして軽く会釈されたので、こちらも目をそらしながら頭を軽く下げた。


 ヤッベかわいい。もう決意が揺らぎそう。告白して玉砕しそう。2週間くらい頭が真っ白になりそう。


 ……いかんいかん……僕は邪な考えを頭を振って追い出す。好きになってはいけない好きになってはいけない。彼女には運命の相手がいるのだから。


 そんな会話を聞いているうちに、教師が教室に入ってくる。それを見て、少しずつ生徒が席に付き始める。


「なんか進展があったら教えてね」


 最後の1人がそう言って席に戻って、授業開始。


 転校2日目ということもあり、昨日ほどの騒ぎにはならなかったようだ。


 これでようやく授業に集中できる。


 ……


 まぁ、僕が授業を集中して聞いたことなんてないけれど。

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