第8話 にゃにゃーん?
ちょっとした冗談のつもりだった。人間が猫語を操れるわけがない。おそらく相当な鍛錬を積んだものが話せる言語だ。素人の僕らが操れるものじゃない。
しかし……
「ニャーニャー」
ムダに似てる。本当に猫が鳴いているのではないかと錯覚するほどに似ている。特技の欄に『猫の鳴き真似』とか書けるレベルだと思う。
挙句の果てに、
「ニャー?」猫のアイビスが返事をしてしまった。「ニャー?」
「にゃにゃーん?」
「ニャーニャ」
「にゃお」
「にゃ」
「にゃー」
思わず口を挟む。
「なんて言ってるの?」
「まったくわかりません」だろうな。「もう少しでわかる気がするんですけど……」
たぶん気のせいです、という言葉は飲み込んでおく。
とにかく、ふざけている場合じゃなかった。
「飼い主さんを呼んでくるよ。その間、見張っておいて」
「あ……ありがとうございます」
彼女の中には飼い主を呼ぶという発想がなかったようだ。どうやら……ちょっと直情型の人間らしい。天然というかアホと言うか……
僕は急いで飼い主さんのところに戻る。そして猫が見つかったことを伝えて、また猫の現場に戻った。
「アイちゃん……!」飼い主さんはアイビスを抱き上げて、「無事で良かった……! ごめんね、怖い思いさせて……!」
飼い主さんはアイビスを強く抱いて、涙を流していた。アイビスがちょっと迷惑そうにしていたが……まぁ飼い猫との関わり方に外野が口を出すのは控えたほうが良いだろう。
飼い主さんは僕たちを見て、
「ありがとう……あなた達のおかげでアイちゃんを見つけられたわ……」
「いえいえ」
「見つけるのが難しいんだと思うけどね」実際、僕だったら草むらの猫を見つけれなかっただろう。「僕は飼い主さんを呼んできただけ」
誰にでもできる仕事だ。僕が褒められることなどない。
とはいえ、このまま謙遜しあっていても仕方がない。
「まぁ、2人いたから解決できたってことで」
2人いたから、片方が猫を監視しながら飼い主さんを呼んでこれたのだ。これが1人だったら、その場を離れている間に逃げられていたかもしれない。
……
しかし、まさか猫探しをしていたら
たまには人助けもしてみるものだ。
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