(完結)希望

 私の思考実験はまだこの程度しか進んでいない。十分な洗練を経ない以上、基礎前提にも推考の論理にも欠陥が多いかもしれない。それにもかかわらず私はこれだけの「実験」によってSNS記事というものに対する自分の考えにいくぶんかの進展を得た。また、従来とはいくらか違った視点でSNS記事と対峙することができた。


 こんな実験をやっている矢先に{都内の有力な新聞で旬刊が発行されるようになった。私の思考実験の一部は現実化されたようであるが、残る半分すなわち日刊の廃止ということは実現されるかどうか疑問である。

 しかし旬刊週刊の発行によって個人個人にこの実験を不完全ながらも遂行することができるようになったと見える。すなわち旬刊週刊だけを読んで日刊には手を触れないことにすれば目的は達せられそうである。}({}内はほぼ原文のまま。現代においてこれと同じように当てはまることは何なのか、またしても応援コメントに書いていただけるといいと思うし、自分でも考えていこうと思う)


 私は軽率にこの実験を他の人に強制する気はないが、とにかくまず自分で試してみたいという希望はもっている。しかし現在の旬刊や週刊が依然として日刊と並行して出ている限り、またその編集方法がおそらく私の考えているのと同一ではないであろうから、結局私の考えている思考実験は到底実行することはできそうもない。

 日刊(=SNSで毎日上がってくる雑記事)全廃。これを直ちに実行するなどということはあまりに現実を無視した痴人ちじんの夢であるかもしれない。しかし前にも述べたように、これをともかくも一つの思考実験としてできるだけ慎重に徹底的に考えてみるということは、SNS記事の読者にとっても、ライターにとっても、かなりおもしろく、そしてまた有益な仕事になるに違いない。そしてその結果はおそらく誰にも何一つ損害を与えるような性質のものではないと信じている。


(大正11年5月 中央公論)

(令和 6年2月 カクヨム)

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一つの思考実験(今) 島尾 @shimaoshimao

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